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美琴「新しいかっこいい必殺技が欲しい」(短編)(打ち切り) 美琴「お願い!今日一日でいいから、私の“代わり”になってくれない?」(短編) 美琴「黒子、アンタってさぁ…彼女とかいないの?」 黒子「はい?」 (短編) 美琴「ちょっとアンタ!」禁書「なぁに?」(短編)② 禁美琴「あ、アイツの事どう思ってんのよ?」超美琴「べ、別に…」 オッレルス「わが家へようこそ!」(短編)② 上条「アクセラにいちゃん」 (短編) 上条「アンタは私のものになんのよ」美琴「……不幸だ」(短編)② 上条「二人で一緒に逃げよう」 美琴「………うん」(長編)(連載中)② 上条「美琴ってMだよな・・・・・・」(短編)(オムニバス)18禁 佐天「きまぐれ」 初春「れぐまき」(短編)②③④
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/御坂美琴の消失 第9章 「ハッ!」 上条当麻は思わず声を上げた。 なぜなら白井黒子へ伸ばしていたはずの『右手』が、何もない空間へと、天へと伸ばしていたからだ。 即座に、視線を下に向けてみた。 あれだけボロボロだった体には傷一つなかった。 ついでに言うなら着ている服も違っていた。 (…………そうか、『遡行の儀式』そのものは成功した、ってわけか…………) 静かな闇の中、上条当麻はどこか物静かに、しかし、物悲しげにギュッと右拳を握った。 悔しかった。 今の自分が無傷であることに怒りすら湧いた。 白井黒子の、全身から血を吹き出させ、最後は崩れ落ちていった姿が見えたというのに、自分が何もできなかったことが悔しくて腹立たしかった。 あれは必要なことだったとはいえ、それでも上条はやるせない気持ちに臍を噛んだ。 しかし、それはほんのわずかな時間。 上条は心を落ち着かせることにした。 これから、ここで起こること。 しかし、それを阻止すること。 それが上条当麻の使命だ。 命がけで送り出してくれた白井黒子。 自身の消滅さえも厭わなかった一方通行。 『姉』を取り戻したいと懇願してきた御坂妹。 必ず帰ると約束したインデックス。 四人の思いに報いるために今やることは、己の不甲斐なさを嘆くことではない。 上条当麻は息を殺してその時を待つ。 正確な時間までは正直、分からないが、この闇が晴れる前に必ず『犯人』が行動を起こすその時が来るのを待つ。 上条同様、『遡行の儀式』という魔術を行使して、この時間に来ているはずの『犯人』が動き出すのを待ち続ける。 もし『犯人が行動を起こさない』なら、それはすでに『終わった後』ということになる。 できるなら上条は、そのようになることを望んでいた。 それならば、上条は『この時の上条当麻』がいつ、目覚めるかをだいたい分かっているので、その直前に行動を起こせばいいだけだからだ。 なぜ、上条は『犯人が行動を起こした後』、すなわち『犯人がすでに世界を変えた後』を望むのか。 それは、上条の優しさだった。 できるなら、犯人は何も知らないままで、元の時間に戻ってほしいのだ。 『遡行の儀式』のルール通り、ここで何をしたかを『忘れて』戻ってほしいのだ。 しかし、そうならない。 不幸体質の上条当麻が望むことは大抵裏切られてしまう。 (…………来たか…………) 上条は心の中で呟いた。いや、正確には嘆いた。 結局はこうなるのかと心苦しくなった。 それでも、犯人を見逃すわけにはいかない。犯人の行動を阻止しなければならない。 そうでなければ白井に、一方通行に、御坂妹に、インデックスに申し訳が立たないからだ。 変えられた世界を元に戻すと言った上条に、文字通り『自身の命をかけて』協力してくれた四人に失礼だからだ。 物音を立てず、そっと立ち上がる。 闇の向こうではかさかさという音が、おそらくは眠っていたなら聞こえないであろうほどの小さな音が響いていた。 全神経を尖らせていた上条だからこそ聞こえたと言えるほどの小さな音が鳴り響いた。 息を殺して、そのまま音のした方へと向かう。 そして――――― 「やっぱり、お前の仕業だったんだな…………」 声をかけられた相手は絶句して、即座に振り向いた。 上条は、闇に紛れている人物を見とめて、どこか、もの悲しげな視線を送っていた。 そして、静かに、ゆっくり歩みを進める。 相手は、突然の展開にその場を動けないようだった。 今回の御坂美琴消失事件の犯人。 いや、犯人と呼んでもいいものかどうか。 なぜなら、この人物はそこまで考えていなかったはずだからだ。 己の行動が、人の生死に関わるほど、未来を変えるなど想像だにしていなかったはずだからだ。 不意に部屋の中に月の光が差し込んできた。 柔らかく部屋の中に自然の、しかし、やや薄暗い明りが灯る。 しかし、その人物を浮かび上がらせるには充分だった。 「インデックス…………」 上条は静かにその名前を呟いた。 その口調には怒りはまったくない。あるのは虚しさだけだ。 白い太ももを露わにしたYシャツ一枚に見えるその姿はどこか扇情的に映ったが、今の上条に下世話な気持ちは露ほども湧かなかった。 「一番、最初に気付くべきだったよ…………俺の財布に『二千円札』が残っていたときにさ…………」 場所は八月二十日の丑三つ時の上条当麻の部屋だった。 「数日前にお前に話したことが仇になっちまってたとはな…………」 だから、上条当麻に怒りは湧かない。 上条自身が己の、軽率とは言えないが、あの時の発言が今回の事件を引き起こしてしまったからだ。 数日前。 上条は、美琴との関係について、しつこく問い詰めてくるインデックスに、つい美琴との出会いからこれまでを詳細に話してしまっていた。 何でも無い、単なるケンカ友達で気の合う女友達、そう言っても信じてもらえなかったから。 詳細に話すことで、自分の言葉に嘘がないことを証明したかったから。 時は八月二十日、場所は自販機のある公園。『二千円札』を自販機に飲み込まれて、難儀していたところに声をかけられた。 美琴との関係が始まりを告げたのはこの出会いからだったというところから話した。 そう、たったこれだけで二人は出会ったのだ。 しかし、その『二千円札』が無ければ、上条当麻と御坂美琴が出会うことはなかったのだ。 なぜなら、上条当麻に七月二十八日以前の記憶はない。 御坂美琴と本当に初めて出会った六月中旬の記憶、そしてその後の勝負という名のケンカの数々、 この記憶が、上条には『無い』のだ。 美琴の方から声をかけてこない限り、『再会』という名の『出会い』の可能性はなかったのだ。 もし、自販機に硬貨を滑り込ませることができたなら。 もし、自販機に『千円札』を入れることができたなら。 上条は、ぼやくことも声を上げることも無く、ジュースを持って自販機を離れていったか、財布に中身が無ければ諦めたか、しただろう。 美琴は、上条の声に気付くことなく、上条がいなくなった自販機に蹴りを入れていたことだろう。 『二千円札』だったからこそ、呑まれてしまったのだ。 それが上条を自販機の前に必要以上の時間で立ち止まらせたのだ。 だから、インデックスは過去に遡り、『八月十九日から八月二十日の寝静まった時間』に上条の財布の中から『二千円札』を抜いた。 上条が起きてくる前に、『八月二十日に持っていく』財布の中に『二千円札』を置かなかった。 この日以外で『上条当麻の財布の中に二千円札が残っている日』を知らなかったから。 確実に、美琴と出会う日であることを知っていたから。 御坂美琴と上条当麻の出会いを導いた、たった一つの手段『二千円札』。 しかし、その『二千円札』が無かったばっかりに、二人は出会わなかったのだ。 翌日に二人は会っているが、あれは上条から声をかけたからだ。 上条と美琴が出会っていなければ、上条は飛空船を眺める美琴の背後を歩くだけに終わっている。 美琴は、前日のショックと思いつめた気持ちで周りに気を配ることなどできないほど追いつめられている。 だから互いに視線を合わせない限りすれ違うだけで終わる。 妹達と美琴は公園で出会う。美琴が公園に行った段階でそれは必然となる。 妹達は公園の一角で子猫に気付いたから必ず出会う。 公園の一角で美琴が子猫を愛でている妹達を必ず見つける。 だから美琴と妹達は出会うのだ。 しかし、上条と美琴は『二千円札の事件』が無ければお互いに気付くことはなかった。 あれば、笑い話ですまされた『二千円札』なのに。 わずか数分、いや、もしかしたら一分にも満たなかったかもしれない時間なのに。 この出会いが無かったばかりに、結果、上条当麻はその世界がどうなったかを知っている。 このインデックスが『知らない』世界の顛末を知っている。 四ヶ月後のインデックスが、自身の行動を『覚えていなかった』のは『遡行の儀式』のためだった。 『過去の意識』と『現在の意識』を入れ替えて時間を遡る『遡行の儀式』では、『変えられた世界=過去の意識』の延長線上に『現在の意識』があるからだ。 だからこそ、インデックスは上条当麻に『遡行の儀式』のことを何の躊躇も憂いも後ろめたさもなく詳細に伝えることができたのだ。 「とうま……どうしてここに…………」 か細いインデックスの声。 もちろん、このインデックスは上条当麻がなぜ、この場にいるのかを分かっている。 もちろん、このインデックスは上条当麻がどうやってこの場に現れたのかを知っている。 にも拘らずインデックスは問いかける。 「お前を――――止めに来た」 予想通りの答えだった。 そして、言ってほしくない答えだった。 「とうま…………」 だから、インデックスはうな垂れる。 だから、インデックスは伏せ目になる。 「お前の気持ちに気付かなかった俺の責任だからだ」 上条は答えた。 「本当に……私の気持ちに気付いているのかな…………?」 「…………それは分からねえ……けど、お前が寂しい思いをしていた、って気持ちに気付いてやれなかったのは俺の責任だ」 「…………………」 上条とインデックスの間に沈黙が訪れる。 気まずいというよりは重いという沈黙が。 今にも泣き出しそうな表情を浮かべるインデックスに上条は、いつの間にか怒りを感じていた。 御坂美琴が殺されて。 御坂妹が嘆き悲しんでいて。 一方通行が孤独のどん底まで堕とされてしまっていて。 白井黒子は、己の存在さえも否定して。 それは、世界的に見ればわずか四人しかいない変化かもしれない。 例え、御坂美琴がいなくとも世界はそこまで変化しないとしても。 それでも、居るべき人物がいない世界の悲しさを生み出したインデックスに上条は怒りを感じていた。 正確には、インデックスをそうさせてしまった自分に怒りを感じていた。 そう。 インデックスは寂しかったのだ。それも気が狂いそうになるくらい寂しかったのだ。 一年と半年以上前の記憶が無いインデックスにとって、上条当麻はすべてだった。 今でこそ、魔術サイドにも科学サイドにも『友人』と呼べる存在は多々いるが、それでもそれはすべて上条当麻によってもたらされたものであることをインデックスは分かっているのだ。 だからこそ。 インデックスは上条当麻の傍に居たがる。 インデックスは上条当麻の傍から離れられない。 そんな純真で真っ白で穢れを知らない気持ちが。 上条当麻を一人占めしたいではなく、上条当麻と一緒にいたい、ただそれだけの思いのために起こった今回の事件だったのだ。 極寒の北極海から戻ってきて以来、 上条当麻の、自分よりも御坂美琴を優先させているような行動が、心に深く突き刺さってしまっていたのだ。 御坂美琴の、彼女だけが自ら上条当麻を誘い、またそれに乗る上条の行動に恐怖を感じてしまっていたのだ。 だからこそ。 インデックスは、『八月二十日に上条と美琴が出会っていない』世界を作ろうとしたのである。 まさかそれが、御坂美琴の命を奪うなどとは微塵も思ってもいなかったにも拘らず。 仮に、八月二十一日以後も、美琴が生きていたとしても、『妹達の一件』が無ければ美琴はそこまで上条を意識することはない。なぜなら、七月二十日に会って以来、二人は一ヶ月以上も会っておらず、また、この間、美琴は、幻想御手を皮切りに、テレスティーナや相園美央など結構、ハードな戦いをこなしていて、しかも、その時は、上条には一切頼ろうとしなかったことからも、妹達の事件まで、上条を当てにしている以前に、その存在すら片隅にも無かった節があって、しかも、美琴の認識としても上条は『何が何でも勝ちたいケンカ友達』でしかなかった。 そして、海原光貴=エツァリが御坂美琴に近づいた元々の理由は『上条当麻の知り合い』が前提なので、一ヶ月以上も顔を合わせていない人物をマークするはずもないから『八月三十一日』の恋人ごっこもなく、『九月一日に出会う』としても、妹達の一件がない限り、美琴が上条を異性として見ている可能性は低いと言えるので、上条とインデックスが絡み合って倒れていようが、白井同様、『どうでもいい顔』をしたことだろう。 ゆえに、上条当麻と御坂美琴が『八月二十日に出会わない』限り、インデックスの憂いはあり得ないと言えた。 (くそったれ…………) 上条は臍を噛みながら心の中で呟く。 こんなインデックスの表情を見せられて、 こんなインデックスの気持ちを見せられて、 上条の心が揺れる。 インデックスが変革した世界と元の世界。 どちらが正しい世界なのか、心が揺れる。 客観的に考えれば、 冷静に見つめれば、 それは間違いなく元の世界だ。 たった一人の我が侭で構築された世界などあってはならないのだ。 しかし、である。 では、インデックスが変革した世界にどんな不備があった? 確かに御坂美琴はいない。 では、その他は? 一方通行は前人未到のレベル6に到達していた。 白井黒子は八人目のレベル5に進化していた。 御坂妹は、軍事利用されることなく『普通の人間』としての扱いを受けていた。御坂妹が常盤台の学生寮にいたのはそれが理由だった。 それは悪いことなのか? 美琴が居ない悲しみを背負っていたが、それは人として生きていく限り、決して逃れることができない運命であり、同時に時間が解決してくれることでもあるのだ。 上条と出会うまでは孤独だった一方通行だって、これからは上条が友人になってやれば済むことだ。 そして、周りの世界は何一つ変わっていなかった。上条が関わったイベントは全てクリアされていた。 おそらく、元の世界で知り合った友人知人は、インデックスが変革した世界でも知り合っていることだろう。 どこに不備がある? 上条の心は揺れる。 インデックスは上条がこの場に現れるであろうことが『分かっていながら』世界を変革した。 魔術による世界構築なら、上条当麻には作用しないことを『分かっていながら』だ。 つまり、それは上条当麻に『最初から』選択権を委ねていたのだ。 元の世界とインデックスが変革した世界、どちらがいいか選んでほしいというシナリオだったのだ。 そこで、上条当麻は自分に問いかける。 自分はどう考えていたんだ、と。 元の世界を、正確に言えば『御坂美琴がいる世界』をどう思っていたんだ、と。 間違いなく美琴は頼りになる。戦闘力はもちろん、記憶喪失であることを知っていながら、それでも上条の味方になってくれる唯一の奴だってことは確かだ。 しかし、それは戦場での話だ。インデックスが変革した世界でも代替は居た話だ。 では普段はどうだった? 美琴に事ある度に因縁をふっかけられて追いかけまわされて、無理矢理付き合わせられたことがほとんどだった日常をどう思っていた? 上条は反芻して、 うんざりだ。 いい加減にしろ。 アホか。 そろそろ付き合い切れねえぞ。 浮かんだ単語はこれらだったのだが、 (………………本当にそうか?) 上条の心がじくりと痛む。 心ならずも面倒ごとを持ちかけられる美琴とのイベント。それを嫌々付き合ってやる心優しい年上のお兄さん。それが上条当麻のスタンスだったはずだ。 はずだったのだ。 上条当麻は自分に問いかける。 いいか、俺、重要な問題だから心して聞け、そして答えろと自分自身に言い聞かせて問いかける。 ――――そんな御坂美琴との邂逅を、お前は楽しいと思わなかったのか? 答えろ。考えろ。 心の内からそんな声が聞こえてくる。 本音を言ってみろよ、という声が聞こえてくる。 御坂に付き合わされて何があった? 電撃付きの追いかけっこに、ウザったい勝負という名のケンカの連戦、窃盗の片棒を担がされて、恋人ごっこを強要されて、アステカの魔術師からは命を狙われて、大覇星祭で無理矢理借りモノ競走で走らされて、罰ゲームに付き合わされて、御坂の後輩・白井黒子には後頭部にドロップキックをかまされて、毎回毎回インデックスには咀嚼される始末。 うんざりでいい加減にしてほしくてアホかと思って付き合い切れない、か―――はん、そうかい。なら、お前はこう思っているんだな。 ――――こんなもん、全然面白くねえぜ。 上条の内なる声が。 もう一人の上条の声が心に言い募ってくる。 そうだろ? そういうことになるじゃないか。お前が真実、御坂をウザイと感じて、突っかかって来る御坂の全てが鬱陶しいんだとしたら、お前はそれを面白いなどとは思わないはずだよな? 違うとは言わせねえぞ。明らかだろうが。 しかし、お前は楽しんでいた。お前は御坂と一緒にいることが楽しかったんだよ。 なぜかと言うか? 教えてやるよ。 ――――お前は白井の問いに真実を答えたじゃないか。 世界をこのままにするか元に戻すかの選択肢、白井が聞いてきた御坂美琴の上条当麻人物評。 白井黒子から聞いたか、御坂美琴から聞いたか。 その問いに、お前は『白井黒子から聞いた』を選んだんだ。 だろうが。 せっかくインデックスが御坂のいない平穏で、ともすれば何人かは前の世界よりも良い待遇になってる世界に変革してくれたってのに、お前はそれを否定したんだ。 八月二十日に御坂と出会って以来、何度も何度も因縁をふっかけられてきた鬱陶しい世界の方をお前は肯定したんだよ。 御坂と顔を合わせれば、ほとんど、ケンカを売られたり電撃を浴びせられたり厄介事を持ちかけられたりした世界に戻りたいと思ったんだよ。 何でだおい? お前はいつも御坂と関わることを避けようとしてきたじゃないか、御坂と出会った己の不幸を嘆いていたじゃないか。 だったらよ。白井の問いに「御坂から聞いた」って言えば良かったんだよ。嘘を吐き続けたっていいじゃないか。御坂がいなくても、一方通行や御坂妹、白井黒子とは知り合いになれるし、お前と御坂妹が間に立てば一方通行にだって友達ができる世界で生活できたんだ。 そこでは、一方通行は前人未到のレベル6に到達していて、白井黒子は八人目のレベル5に進化していて、御坂妹は軍事利用されることなく『普通の少女』として生活できて、そしてインデックスは寂しさを感じることも世界を変えようなどと大それたことを思うこともなくお前の傍にいられる世界だったんだぞ。 そう言った別の日常をお前は放棄したんだ。 もう一人の上条当麻が上条当麻の心に語り続ける最中、不意に上条は闇に包まれた改札口に立っていた自分に気が付いた。 進むか引き返すか。 その境界線に立っていた。 「…………!」 つい、と腕の裾が引っ張られている。 一度、ハッとした上条ではあったが、摘まんでいる相手は誰か分かっている。 声をかけてはこないが誰なのかを分かっている。 振り向かなくても誰なのかを分かっている。 引き留めているのが誰なのかを分かっている。 心細く、しかし、精いっぱいの勇気を振り絞っている思いがそこから伝わってくる。 一瞬、闇の中に冷たい風が吹いた気がした。 一瞬、雪がちらついたような気がした。 しかし、再び心の声が聞こえてくる。一時の感情で判断するなという含みを持って。 いいか。俺はお前の気持ちに聞いている。 言っておくが、白井黒子、一方通行、御坂妹が嘆き悲しんでいたから、とか言い訳するんじゃないぞ。 それだったら、時間遡行してまで、しかも危険を冒してまで御坂美琴を取り戻そうとする理由にならないし、第一、世界を元に戻すよう協力要請したのはお前の方だ。 そうだろうが。お前は今まで、自分の命よりも他人の命を優先してきたから自覚はないかもしれないが、御坂美琴が鬱陶しいなら、御坂美琴を慕い寵愛する白井に全てを任せてしまえば良かったはずなのに、お前は『自分の意思』で御坂美琴を助け出すことを選んだんだ。 それは何故だ? 上条当麻の内なる声が上条当麻の心に訴えかけてくる。 後頭部を誰かに強引に踏みつけられて力づくで押さえつけられたような気がした。 もう一度訊くぞ。これで最後だ。 お前は御坂美琴に絡まれる日常を楽しいと思ってたんじゃないのか? 言えよ。 「――――当たり前だ」 上条当麻は答えた。 無理矢理、顔を上げ、己を押さえつけてくる『自分自身』にはっきりと答えるために力づくで立ち上がろうとする。 「楽しかったに決まってるじゃねえか。解り切ったことを訊いてくるな!」 上条が心の内で吼えた刹那、自分を踏みつけていた自分はガラスが割れたような乾いていてなおかつ澄んだ音を立てて砕け散った。 同時に、上条の腕の袖を摘まんでいた手も振りほどいて、改札の向こうへと進む。 生まれつき、幻想殺しの所為で不幸を背負って生きている俺に所構わずちょっかいかけてくる女だぞ。 記憶喪失であることを知っていて、それでも、おそらくは記憶喪失前と同じ対応をしてくれる女だぞ。 不幸体質の俺に、インデックスを含めても他にはいない、『自分から』声をかけてきてくれる女だぞ。 そんな女の子が気にならないと言ったら嘘になるに決まっているだろう。 だからこそ、俺はこの場にいる。 こればっかりは『不幸だから』で切り捨てられないことだ。 御坂美琴だけは『不幸だから』で遠ざけたくない存在なんだ。 だからこそ―――― 気がつけば目の前に無言で佇む御坂美琴がいた。 場所は、美琴と『初めて』出会った自販機の前だった。 もちろん、現実ではなく上条の心の中だ。 不意に二人を柔らかい日差しが照らしてきた。 まるで上条のもやもやした心を晴れやかにするかのように。 上条は、インデックスが変革した世界を否定したのではなく、御坂美琴のいない世界を否定したのだ。 どこか、心がすっとした気がした。 上条当麻の腹は決まった。 「インデックス。俺は元の世界の方がいい。みんながいてみんなが笑ってみんなが馬鹿やっている世界、そこには御坂だって含まれる。俺はそのためにここに来た」 インデックスを真っ直ぐ見つめて。 真摯な瞳で、 上条当麻はインデックスにきっぱりと優しく宣言する。 「とうま…………」 「だから、その『二千円札』を財布に戻すんだ。それですべてが元通りになる」 「…………………」 「心配すんな。こういうことをしたからって俺は別にお前を嫌いになったりなんかしないし、これまで通り、一緒に暮らすこともやめない。お前が俺のことを嫌いにならない限り、俺からお前を追い出すようなことは絶対にしない」 言って、にかっと笑う上条。 「ズルイんだよ…………」 インデックスは右手に持っている『二千円札』を左手に持っている『財布』に戻そうとして、 「…………そんな顔で言われたら、とうまの言うことを聞かない訳にはいかないかも…………」 インデックスの瞳から一滴、涙が落ちる。 しかし、それは悲しみの涙ではない。 「でも、とうま約束して…………」 「ん?」 「いつの日か…………とうまは、短髪か私を選ぶ日が必ず来る…………今のとうまじゃ意味が分からないかもしれないけど…………そんなに遠くない将来、この言葉の意味が分かる日が必ず来るから…………」 インデックスは、ぐっと前を向いた。 まだ涙目ではあったが、それでも強い意志が宿った瞳で上条を見据えた。 「どんな選択だとしても、私と短髪、二人とも納得させられる答えを見せるんだよ。じゃないと私も短髪もとうまを絶対に許さないかも」 インデックスの問いかけに、上条は、確かにインデックスの言った通りで意味が少し分からないので、ちょっと苦笑を浮かべて頷きかけようとして、 それに気付いたのは『背中にいきなり走った灼熱感』からだった。 「…………がっ!?」 突然の『熱さ』に上条は背中に『右手』を当ててしゃがみ込む。 しかし、『右手』を持ってしてもこの灼熱感は消えない。 「まったく……あれほどインデックスを泣かせるな、と言ってあったのに、何をやっているのかな? きみは」 と同時に聞こえてくる声。 ついさっきまで後ろにあった気配が、今はすぐ目の前にある。 無理矢理、顔を上げてみれば、そこにいたのは、赤髪長髪で顔にバーコードを付けて煙草をふかしている長身の黒い神父だった。 「て、てめえ……どうしてここに…………?」 「んー……決まっているだろ。インデックスに協力するためさ」 「なん、だと…………?」 「忘れたのかい? インデックスは魔術を使えない。ならば、どうしてそのインデックスが『遡行の儀式』を遂行できたのか。答えは『協力者がいた』以外ないと思うが」 ステイル=マグヌスの興味なさそうな説明を聞いて、上条はインデックスを見やった。 ステイルの後ろにいるインデックスは、ステイルの行動に驚いて声を失っているようだった。 まさか、上条に切りつけるとは思ってもみなかったのだろう。 「僕ときみはこの時期に『三沢塾』の一件を片付けた。なら、『この日』に『僕』が学園都市にいてもおかしくないはずなんだけど…………きみは忘れていたのかい?」 言って、無造作に『炎の剣』を下段に構えるステイル。 しかし、上条当麻は一撃目のダメージが思っている以上に大きく、ガクガクして体が動かない。 「何、心配することはない。この炎の剣では肉体に損傷を与えることはできないよ。単に『意識を飛ばす』だけのものだ。まあ、一撃で仕留めたかったんだけど、インデックスの手前、あまりきみを無碍にできないところもあってね。ちゃんと説明してから『元の時間』に戻してあげよう、そう思ったんだ」 (くそったれ……それで、意識が遠くなってきやがるのか……マズイ……今のまま、元の時間に戻ったら…………) そう。今度は上条当麻自身も『変換された時間の流れ』に呑み込まれてしまう。 なぜなら、ここにいる上条当麻は『意識』を『この時間の上条当麻』と交換している存在だからだ。 元々、『御坂美琴のいない世界』から八月二十一日にタイムスリップしたので、『遡行の儀式』のルール通り、四ヶ月先からこの世界と意識交換したことになるから。 『意識』には『幻想殺し』は作用しないのだ。 ゆえに今、意識を失うのは絶対にマズイ。 もしかしたらステイルの舌先三寸で再び、インデックスが財布から『二千円札』を抜きとる可能性があり、しかも、それは『確認できない』のだ。 「では、とどめといこうかな? 先に四ヶ月後に行っているといい」 「くっ…………」 ステイルが無造作に近づけるのは、上条が身動きできないからだ。 もう右手を翳すことができないからだ。 しかも、上条の意識がどんどん遠のいていく。 (や、やば…………) ステイルが振りかぶる。 「インデックスが作った世界を否定するなど僕が許さない」 静かに呟いて、 炎の刃が振り下ろされて―――― 刹那、上条の頬をなでて閃光が走る! 「何っ!?」 ステイルが驚愕の声を上げると同時に、閃光が炎の刃を粉砕した。 (な、何だ…………?) 薄れゆく意識の中、上条は必死に覚醒しようとした。 混濁した意識の中、目の前に、ベージュのブレザーとチェックの入ったプリーツスカートを翻す少女が、肩までの長さの亜麻色の髪が上条の前に飛び出してきた勢いで揺らいでいたのが見えた。 (だ、誰だ…………?) 心の内だけで呟くと、今度は、首筋に走る衝撃。 そして、 「すまねえな。正確な時間を忘れちまったんであてずっぽうに飛んだんだがどうやら間に合ってよかったぜ。だから気にするな。俺もヤバいと思ったさ。まあ後のことは俺たちがなんとかする。いや、どうにかなることはもう分かっているんだ。お前にもいずれ解る。だから今は安心して眠れ」 (何だ? 誰だ? どうなってるんだ?) 上条は朦朧とする中、恐れ慄いた表情を浮かべるステイルと、今にも泣きそうなインデックスの顔と、全身を火花でスパークさせている快活そうな少女と、その隣に並んで立ったツインテールの少女が見えた気がして―――― そのまま、上条当麻は気を失った。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/御坂美琴の消失
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/当麻と美琴の恋愛サイド/幸福の美琴サンタ 第3章 あくまでグッズのため やはりどうにも上条とこの距離で、しかも手を繋いでいるなんて状況だと自分の言動がおかしい。 幸いにも上条は料理と格闘中で気付いていないようであった。 一人で赤面していてもしょうがないので美琴も割り箸を手に取り食べ始めるが、こんな状況で美味いのか不味いのかなんて 分かるわけもなかった。仕方がないので箸を休め、元の話に戻る。 美琴「で、さっきの話。アンタは聞きたい?」 一応念を押してみる。 上条は一瞬、美琴にとって話すのは辛いんじゃないかと思い躊躇うが、先ほどのやりとりを思いだしてそれを振り払う。 上条「まぁ知りたいですな。いつ頃だって?」 美琴「六月中頃。私が夜、繁華街を歩いてる時に、ナンパに会ったのよ」 上条「…………………へ?」 まさか、それが俺?と上条は絶句する。 夜の繁華街で、常盤台の中学生をナンパ。今の自分からは考えられない。それほどの違いがあるのか、と。 美琴「10人くらいの馬鹿な不良に」 上条「…………び、びびった」 美琴「私がナンパされたことが?」 上条「違う違う。俺がナンパしたのかと思って」 美琴「…………ふーん。アンタが私をナンパするってそんな驚くようなことなんだ。ふーん」 上条「ん?した方が良かったのか?」 美琴「し、知らないわよそんなの!勝手にすればいいじゃない馬鹿!!」 上条「わけ分からんキレ方すんな。しかしそいつらつくづく馬鹿だな。よりによってお前に絡むなんて」 美琴「そうね。でも、それより馬鹿な奴が、私を助けようとかアホなこと考えて割って入ってきたのよ」 上条「うーわ、真性の馬鹿ですな。放っといても解決するというのに」 美琴「それがアンタ」 上条「……………………………と、とてもナイスなガイですね。10人くらいの不良に掛かっていくなんて惚れちゃいそう」 美琴「不良を倒したのは私だけどね」 上条「か、かっこ悪すぎる。上条さんったら本気で落ち込むぞ」 美琴「それ以前に掛かっていくも何も、アンタは『知り合いのフリして自然にこの場から連れ出す作戦』とか何とか言って 誤魔化そうとしただけよ。アレはどう考えても無理あったわ」 上条「……………………………ま、まぁ、10人相手ならそうするしかねぇからな」 美琴「その作戦を私がぶち壊して」 上条「…………」 美琴「不良に絡まれたアンタは、何か不良を説得し始めたわ。私をガキだのガサツだの反抗期だの罵って」 上条「ははは。大正解………痛っつ!」 美琴は上条の足を踏みつけた。 能力は使わないと言ったが、攻撃しないとは言っていない。 美琴「そんでアンタもろとも焼いてやったんだけど、アンタにだけ効かなかったのよ!ムカついたからそれから随分追い回して やったわ」 上条「なんだ、やっぱガキでガサツで反抗期なんじゃ………っと」 再び足を踏もうとするのを上条は避ける。 避けられて美琴は表情をムッとさせて、プイっとそっぽを向く。 美琴「ま、ちょっと嬉しかったけどね」 そしてボソっと呟く。 上条「へ?」 美琴「はいはいおしまーい。それが『~出会い編~』よ。他に何か聞きたいことは?」 上条「う、うーん。聞いて良かったような悪かったような……あ、そうそう、俺がお前を打ち負かしたって言ってたけど、どんな 感じだったんだ?」 美琴「………………悔しいからあんま言いたくないんだけど」 上条「なら別にいいよ」 美琴「話さないなんて言ってないでしょ!……私の攻撃、本気の一撃も打ち消されて、私がアンタにビビって勝手に負けを認めた だけよ」 上条「ほ、本気の一撃って何だよ……雷でも落したのか?」 美琴「そうよ。でっかい奴ね」 上条「……………俺に?」 美琴「アンタに」 上条「……………お、俺よく生きてたな。つかお前それ殺人未遂じゃん」 美琴「びっくりね」 上条「少しは悪びれろよ」 まぁ今に始まったことじゃないか、と上条は時系列を無視して独りごちながら、再び料理に手を付ける。 上条(しかしそんな一撃を食らわした奴と、今こうして恋人同士のような状況になってるというのはどういうことなんだ) と少し考えるも、上条的には『昨日の敵が今日の友』となるのは日常茶飯事であったため、まぁそんなこともあるかと適当に 結論づけてしまった。 一方、美琴はぼけーっと行儀悪く箸をねぶりながら上条の行動を見つめる。 上条「御坂」 美琴「ふぇ、何?」 上条「そこのパスタみたいなの食いたいんですけど」 美琴「……ああ、はいはい」 先割れスプーンでパスタは無理である。 美琴は口から箸を抜き、パスタをそれに絡める。 上条「つか何でパスタがあってフォークが無いんだよ。後で店員に言うか」 美琴「まぁ食べたかったら私が食べさせてあげるわよ。はい」 上条「あん。お、いけるなこれ」 美琴「ほんと?私も食べ…………」 美琴(これ、私の箸じゃん!私ってばまたボケボケなことを………) 再び赤面して顔が熱くなる。 しかし薄暗いせいもあって上条は気付かない。 美琴(つか、こいつはもうちょっと間接キスにリアクション取っても良いんじゃないの?) だんだん自分だけオロオロしている状況に腹が立ってくる。 そして上条も動揺させてやるという、妙な対抗心に駆られる。 美琴(負けないわよー!) 意を決してパスタを口に運ぶ。 美琴「……………」 味なんて分からない。 その代わりに顔から火が出そうだ。 上条「な、旨いだろそれ」 美琴「そそそそ、そうね。他には何食べたい?」 上条「え、いや取れるものは自分で取るって」 美琴「遠慮してんじゃないわよ。手がふさがってるのは私のせいなんだから」 上条「………んじゃぁ……それ」 美琴「………はい」 上条「んー、ちょっと味薄すぎだな」 自分でも食べてみる。 どっちみち味はよく分からない。 その代わりに目は回った。 そんなことを数回繰り返した結果、美琴自身が満身創痍に陥る。 美琴(な、何なのこいつ。鈍感にも、程が、あるでしょ……) 心の中でどうにか叫んで、上条をトロンとした目で見つめる(本人は睨んでるつもり) 美琴(………ん、あれ?) 薄暗くて今までよく分からなかったのだが、よくよく見ると上条の顔が赤い。 試しにパスタを少しだけ箸に絡め、上条の口へ無言で持って行く。 上条「み、御坂?俺はそろそろもういいって。なんつか、その……ケーキもあるんだろ?腹いっぱいになってもアレだしさ」 上条は目を逸らしそわそわしている。 美琴「んじゃー私が食べるわ。あん」 そこでチラッと上条を見ると、うわーそれお前そんな舐めちゃうのうわー、とでも言いたそうな間抜け面をしている。 それを見て美琴は心の中でガッツポーズする。 美琴(やった。ついに勝ったわ、ざまーみやがれっつのこの鈍感野ろ……………あれ?) ちょっと待てよと考える、上条が鈍感なのは確かだが、それでもどこかからかは気付いていたらしい。 それなのに自分は一膳の箸をさも当然の如く使い回していた。 それが上条からはどう見えただろうか。 『アンタとの唾液交換くらいどうってことないわよ』などと思われなかっただろうか。 そこまで考えて突然焦り出す。 美琴「あの、あのさ!違うの、あの、その、勘違い勘違い!!」 急に狭いソファの上で美琴が意味不明なことを言いながら暴れ出す。声は裏返っている。 今まで蓄積された上条成分のおかげで美琴の頭はもはや真っ白だった。 上条「おまっ、いきなりなんだ!割り箸振り回すなあぶねぇ!!」 突然目の前でぶんぶん箸を振り回されたため、慌てて上条は左手で美琴の右手首を掴む。 美琴「えっっ!!??」 能力を封じられた状態で、両手の自由を奪われるという状態に美琴はさらに混乱する。 力では上条に勝てるわけがない。 上条「ん?つかお前、顔真っ赤じゃねぇか」 美琴「う、うん」 思わず甘えた声で肯定してしまう。 美琴(えっと、うんと。こいつが『唾液交換くらいどうってことない』って思ってて、『私が顔真っ赤』と分かってるなら……) そして恐ろしく変な方向に勘違いした美琴は、そっと目を閉じる。 緊張して体が少し震えた。 上条(へ?は??あれ???ちょっと待ってこれどういう状況ですか………いや、慌てるな、上条さんは知っている。俺はこんな おあつらえられた状況で素直にホイホイ間違うほど今まで柔な経験してねえんだぜ!!) ここで勘違いによりキスなんかして、また雷を落されるような事態になるのはごめんである。 上条(落ち着け。落ち着いて考えろ上条当麻。まず、御坂は顔が赤い。これは間接キスの影響かもしれないが、よく見てみろ、 御坂は震えてるじゃねえか。具合が悪いのかもしれない。そして、俺はさっき顔が赤いことを指摘して、そしたらその後 御坂が目を閉じたんだ。ここから導き出される答えは何だ!?) ハッ!!と気がつき上条は生唾を飲む。 いくら上条が鈍感だと言っても一応健康な男子である。アレを気軽にするなんて出来ない。 しかし美琴が本当に具合が悪いなら放っておくことも出来ない。 意を決して上条は美琴に顔を近づける。 美琴は僅かな気配でそれを察して、息を止めた。瞼に力が入る。 上条(ち、近い………) 顔に掛かる髪の毛が一本一本数えられるくらいまで近づく。 美琴の顔から発せられる熱が感じ取れる。 そして…………………おでことおでこがくっつけられた。 上条「えっと………………ね、熱は無いみたいだぞー。多分」 ふとした何かの間違いで口と口が触れるのではないかという僅かな距離で話し掛けられ、美琴は意識が飛びそうになり、思わず 前のめりに倒れる。 頭が上条の肩に落ちた。 上条「うわ、御坂?やっぱ具合悪いのか?」 美琴「………………………………う、うん」 色んなことが頭の中を巡って、美琴にはそう応じるのが精一杯だった。 ―――5分後 上条「落ち着いたか?」 美琴「…………うん。大丈夫」 美琴は上条が体の上に掛けたコートに顔を埋めて、上条の方を見ずに言った。 落ち着くにしたがって、さっきまでの自分の行動を振り返って憂鬱になる。正直そこから逃げ出したいくらいだった。 そんな状態のなか、再びノックがされる。 店員「しつれーしまーす。ケーキお持ちしましたー」 上条「あ、はい」 店員が入ってくると、美琴は未だ恋人繋ぎ状態の左手をサッとコートの中に隠した。 上条の右手が美琴の太ももに触れて、上条は内心ドキッとする。 店員「あ、こちらもお先にお渡ししますね」 若い女性店員は小さめのホールケーキを置くと、ついでトレイから透明な袋に入ったカエルのフィギュアを上条と美琴の前に 置いて出て行った。 美琴「来たっ!」 それを見て美琴が突然元気になる。 実はクリスマス仕様の限定フィギュアというのは知っていたが、実際にどういうものか見るのは美琴も初めてだった。 手が片方塞がってるので、右手で自分の前に置かれた物を見る。 美琴「ふむふむ。限定物にしてはクオリティ高いわね。可愛い!」 手に取ったのはピョン子がサンタクロースの格好をしているフィギュアだった。 出来は良かったが、左に妙な凸凹が付いている。 もしやと思い、上条の方に置かれたものを見ると、サンタクロースの格好をしたケロヨンの右側にも似たような凸凹が 付いていた。 上条「それ、繋がるのか?」 どうやらその通りらしい。 美琴「ちょっと手伝って」 手が塞がっているので、美琴の右手と上条の左手でそれらをくっつけてみと、見事に一つのフィギュアが完成する。 美琴(なんだか、ケロヨンとピョン子が恋人っぽく見えるわね) 男女ペア限定とは書いていなかったが、その実このプレゼント企画は結局ほとんど恋人向けであったのだ。 美琴は再び外して、ピョン子の方だけをポケットに仕舞う。 美琴「そっち、アンタにあげるわ」 上条「ん?これって両方無いと意味ねぇんじゃねぇの?」 美琴「良いから。今日付き合ってくれたことのお礼よん。こんなレア物、そうそう手に入らないんだから」 上条「つか、俺にはカエル趣味ねぇし……」 美琴「細かいこと言ってんじゃないわよ。私が良いんだから良いの」 上条(……いや、それだと今日の目的がよく分からなくならないか?) 美琴「あ、でも無くしたら殴るからよろしく」 上条「……………何だよそれ」 上条はその理不尽な発言に脱力したが、面倒なのでとりあえず携帯にでも付けておけば無くさないかな、とか考えつつ ポケットに仕舞う。 上条「さて、ケーキ食うか。切るぞ?いやその前に味見」 美琴「あ、ずるっ!私も」 二人は上に付いていた生クリームを指ですくい舐める。 上条「!?」 美琴「!?」 二人仲良く絶句。 上条「な………何だこれ、美味すぎるだろ。俺こんなケーキ食ったことねぇ!!何この滑らかな舌触り!?」 美琴「何これ、学舎の園にあるケーキ屋さんより美味しいじゃないのよ。何なのよこの絶妙な甘さ!何なのよこのファミレス!?」 二人してぎゃーとひとしきり叫んだ後、妙な静寂が二人の間に流れた。 上条「と、とりあえず切り分けるぞ」 上条がナイフを左手に持ち、小さいホールケーキを半分に切ろうとする。 しかし左手なためか、それとも欲望が顔を出したのか、ナイフは正確に真ん中を捉えず少し右へずれる。 美琴「ちょっと!アンタそりゃ無いでしょう!」 あまりのケーキの美味しさのせいか、臆面もなく叫ぶ。 幸いケーキはまだほとんど切られていなかった。 上条「ご、誤解だ誤解!手元が滑ったんだ!」 美琴「いい、私が切る!」 上条「ちょ、ちょっと待て、やっぱずれてないか?」 美琴「どこがよ」 上条「ちょっと貸せ」 美琴「嫌よ」 仕方がないので上条はナイフを持ったままの美琴の右手を掴んでギリギリと右へ押す。 上条「こうだろ?」 美琴「こうよ!」 上条「ならこうだ!」 美琴「もうちょっとこうよ!」 上条「まぁ、それだな。よし、切るぞ。いいか?まっすぐ切るぞ」 美琴「ちょ、ちょっと待って!!」 上条「あん?」 ナイフが1cmくらい沈んだところで、初めて美琴は冷静になった。 美琴(ちょっと待ちなさい。え?何これ何?これってアレでしょ?アレよね!?…………結婚式の) 自分でも馬鹿なことを考えているなと思うが、意識してしまうともう止まらない。 緊張して手が震える。 上条「おい御坂!そんな緊張するな。大丈夫だ、ケーキは逃げない。最悪切り分けた後で比べればいいことだ、な?」 美琴「う……」 上条に相づちを打とうとして、上条との距離が物凄く近いことに気付きさらに参ってしまう。 自分の心臓がバクバク言うのが聞こえ、震えは更に大きくなる。 上条(チィィッ!背に腹は代えられない) などと妙なテンションで心の中で叫びつつ、右手を美琴の左手から一瞬離し、美琴の肩に回す。 それに美琴はビクッと震え、さらにカチコチになる。 上条「御坂、落ち着け、深呼吸だ。深呼吸。はい一緒に、ひっひっふー!!」 上条も相当ハイになっているためか、意味の分からないことを口走る。 美琴(ちょ、お願い。やめて、息が掛かる。もう、死んじゃうぅぅ) 上条「ええいもうどうにでもなれクソ!」 むしろ震えが大きくなった美琴を見て、上条はほとんどやけくそ気味に美琴の右手ごとナイフを押し込み、ケーキを両断した。 上条「ふう。完璧に真っ二つだ。意義無いよな御坂」 美琴は喋らず思い切り縦に首を振る。 上条が右手を肩から離すと、すかさず手を左手で握り直す。正直今幻想殺しが無ければ上条どころか店がやばい気がする。 二人は座り直すとケーキを食べ始める。上条は左手だったが、ケーキくらいは食べることができた。 両者それぞれ色々混乱したものの、そのケーキの美味しさはそれらを帳消しにするくらいの出来映えだった。 これがデフォルトのメニューなら定期的に通いたいと思える程である。 美琴「はぁ、御馳走様」 上条「御馳走様。これ単品でねえかな。追加注文したい」 美琴「クリスマス限定って書いてるし無理だと思うわ……ってアンタ、口の横に生クリーム付いてる」 上条「ん、どこだ?」 どれだけむしゃぶりついたのか、上条の口の脇には結構な量の生クリームがベッタリ付いていた。 本人はどこに付いてるか分かっていないようである。見当外れな場所を左手でペタペタ触っている。 美琴「馬鹿ね、ここよっ」 美琴は笑いながらそれを人差し指で拭う。 人差し指に生クリームが付いた。 美琴「えっと………………………」 上条と顔を見合わせる。 美琴(この後どうすれば良いんだろう?) 美琴は考え出す。 案一、どこかに拭う。 美琴(そんなもったいないこと出来ない!気が狂うほどに美味しいのに!!) 案二、自分でペロリと舐める。 美琴(んな恋人のテンプレみたいな行為できるか馬鹿!!) 案三、上条に舐めさせる。 美琴(……………………………………一番あり得ないわ) 上条「おい、どうした?固まっちまって、それどうすんだ?」 美琴「う、うっさいわね!考え中………っつか考えるまでもないわ」 そう言って美琴は脇にあったコートのポケットから小指と親指でハンカチを取り出す。 上条「お、おい!ちょっと待て、それをどうする気だ!?馬鹿な真似はやめなさい!!」 慌てて叫んで美琴の右腕を掴む。 美琴「な、何すんのよ。他にどうしろって言うのよ!」 上条「どうするって…………………な、舐めたい」 美琴「ちょ、ちょっとアンタ、目が血走ってるわよ?」 上条はもはやそのケーキの虜であった。はぁはぁと息を荒げ、美琴の人差し指の先に付いたクリームをジーッと見つめている。 今にも食いついてきそうで美琴はややたじろぐ。 上条「嫌なのは分かるが、お願いします。舐めさせて……下さい」 美琴「な、何馬鹿なこと言ってるのよ」 上条「……………………………ダメ?」 美琴「ッ!!??………………だ……………駄目、よ」 上条の渾身のお願いにやや折れそうになるが、すんでの所で耐える。 上条「はぁ。そうかぁ、不幸だなぁ」 美琴「ッッ!!!???………………わ、分かったわよ。勝手にしなさいよもう」 さすがにこれは今日の趣旨的に諦めざるを得ない。 美琴はそう言うと指を突き出しそっぽを向く。 上条「さすが美琴センセー。も、物わかりが良いぜ。はぁ…はぁ………で、ではいただきます」 そう言って美琴の人差し指をパクリとほおばる。 美琴(うわ、生暖かっ………舌が変な感じ!) チュパチュパチュパチュパチュパチュパチュパチュパチュパチュパ。 美琴「ちょっ、いつまで舐めてるのよ。や、やめっ……あっ……ば、馬鹿……」 1ミリグラムも残すまいという程に細部まで綺麗に舐めとられる。 肉と爪の間をペロペロしたり、指の横腹をツーと舐められたりして、美琴は初めての感覚に動揺する。 美琴「い、いい加減離せ馬鹿ー!!」 上条「ああああ。まだ味がー」 美琴「残ってないっつのこの変態!!」 上条「ぐぁ!」 美琴は思いっきり指を引いて、その手で上条の頭に強烈なチョップをする。 結構効いたようで、上条は頭を抱えてうずくまってしまった。 かと思った次の瞬間にガバッと起き上がる。 上条「う!!な、何か悪い夢を見ていた気がする」 美琴「アンタ、あれだけやっておいてその言い草ってどうなのよ」 美琴はハンカチで指を拭きながらジト目で睨む。 さすがに今回は舐めない。舐めたら意識が飛びかねない。 上条「こ、怖ぇーこのケーキ。美味すぎて頭が馬鹿になったかと思った」 美琴「アンタ元から馬鹿でしょ。ま、まぁケーキについては同意するわ」 もしや学園都市で開発された何かヤバイ物が入っているのでは?と思わせるほどの美味しさであった。 中毒になってもマズイのでもう食べない方が良いかもしれない、と二人は思った。 そうこうしてる内に店員が来て、決められた時間が過ぎそうであることを告げられる。 普段は時間制ではないが、クリスマスは特別仕様であった。 二人は退出の準備をしようとしたが、問題は繋いだままの手である。 来た時と同じ鐵は踏みたくない。 上条「さて、どうしたもんですかね」 美琴「ちょっと待ってて」 美琴はそう言うとソファに深く腰掛け、目を半分閉じて動かなくなった。 言われたとおり待ってると、2分ほどして目を開き、あっけなく手を離した。 美琴「前に学校で禅を習ったのよ」 そう言うと立ち上がって伸びをする。 上条(何故それを最初にやらないんだ???) 甚だ疑問だったが、今更そこを責めてもどうにもならないと思い、すっかり美琴の手の感触が染みついてしまった右手を ワキワキと解すことにした。 美琴「あ、そう言えば、アンタお金大丈夫なの?何なら私が奢ろうか?」 上条「いやいいよ、さすがに自分の分は自分で払う。最近食費が浮いたからちょっとくらいは大丈夫だ。ほんとは俺が全部奢って やるーって言いたいところだけど」 美琴「私の都合で来たんだからそれは遠慮するわ」 そう言うと思った。という顔をして上条も立ち上がる。 美琴「んで」 上条「あん?」 美琴「次どこ行く?あ、帰るとか言ったら殴るから」 上条「…………………先に言うなよ」 二人は店を後にする。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/当麻と美琴の恋愛サイド/幸福の美琴サンタ
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あ、ああ……そのな、ちょっと悪い夢を見たんで、まだ夢と現実がごっちゃになってた」 「はぁ……まあ、起き抜けなんてそんなものですわ」 白井はため息を一つ吐いた。 同時に上条当麻は思った。 どうやら、世界は元に戻ったようだ、と。 まだ実感は湧かないが、今の白井の言葉と現在の自分への対応を鑑みると、『変えられた世界』ではない、ということはなんとなく感じられた。 とは言え、上条には別の疑問が浮かんだ。 確か、『遡行の儀式』では『現在の意識』と『過去の意識』を交換するので、過去に遡って歴史を変えてしまえば、その流れに飲み込まれ、現在の意識が『新しい過去の意識』の延長線上にある『元の記憶』は書き換えられてしまうはずなのに、なぜか、上条の記憶には、あの『インデックスが変革した世界』の記憶が残ってしまっていた。 それは自分だけなのか? 念のため、確かめてみよう。上条はそう思った。 「なあ、白井? お前のここ三日から四日ほどの記憶を教えてもらえないか?」 「また変わった質問ですわね。とは言え、何とお答えすればよいものか…………そもそも、わたくしのここ三日ほどの記憶を訊いたとしても、上条さんとは無関係かと思うのですが?」 「てことはなんだ。俺とお前は久しぶりに会ったってことか?」 「そうですわね。お姉さまの方は分かりかねますし、正直、分かりたくもありませんが、わたくしと上条さんに限るのであれば、もしかしたら九月三十日以来かもしれませんわ。って、ええい! 忌々しいことを思い出させるんじゃありませんの! ああ、今でも思い出すだけで悔しいったらありゃしませんわ! こともあろうにお姉さまとペア契約を上条さんが結ばれました日のことなど永遠に記憶の奥底に封じ込めておきたかったですのに!! って、痛っ!」 物腰穏やかに話が始まったと思ったら、何か嫌なことを思い出してしまったらしく、どんどんヒートアップしていった挙句、どうやら、誤って指を切ってしまったらしい。 刃物を使っているときは、余計なことを考えるとマズイ、といういい例だ。 「おいおい大丈夫かよ」 「大丈夫ですわ! と言うか、これはあなたの所為でございますのよ!」 「悪かった悪かった。それでいいから、ちょっと指出せよ」 「言っておきますが、指を舐めるなどという行為に走りましたら、ただじゃおきませんわよ。わたくしの白く柔らかい指先に舌を這わせていいのはお姉さまだけですの」 「…………絆創膏を貼るくらい、いいだろ?」 「まあ、それくらいなら」 言って、上条は近くにあった救急箱から取り出した細長いものをひらひらさせる。 白井は素直に指を差し出し、上条はそれを優しく巻いた。 「これでよし、と」 「ありがとうございますの」 しばし、二人沈黙。 「そういや、インデックスと御坂は?」 「インデックス? ああ、それがあのお連れの方のお名前ですのね。お姉さまとインデックスさんは二人で出掛けております。上条さんの着替えを取りに行っていますわ」 「え゛……何であの二人で…………?」 「ここに残るのをどちらにするかを揉めに揉めた結果が二人で行くことになったからですわ。もし、上条さんが目を覚まされても監視役を置いておけば、ふらりと消えることはない、そう考えたのでしょう。ですから、心底不本意ながらもわたくしが残っているのです。ああ! わたくしがお姉さまと一緒に行きたかったのに!」 間違いない。こいつは白井黒子だ。 上条当麻が知っている世界の方の『白井黒子』だ。 確かめるつもりでいたが、確かめる必要はなかった。このちょっとした会話で上条はそれを理解した。 それで安心した。同時にどこか寂しくなった あの、御坂美琴を失ったことを誰よりも嘆き悲しみ、己の存在さえ否定して、血まみれになって自分の命を振り絞ってまで、上条当麻に力を貸してくれたレベル5の白井黒子はもういないのだ。 「何ですの? その懐かしみの中に哀れみが垣間見えるような視線は? 別にあなたにわたくしの嗜好を否定される謂れはございませんわよ」 ジト目を向ける白井。 「いや、そんなつもりはねえよ。そんじゃま、あの二人をおとなしく待つとしますか」 言って、上条は再びベッドに横になった。それを見て、白井は傍に置いてあったカバンから一冊の書籍を取り出す。 しばし、二人の間を沈黙が支配した。 それは別段、居心地の悪さを感じるものではなかった。 特に上条は、そこに白井黒子が無傷で居ることが嬉しかった。 同時にやっぱり寂しくもなった。上条は窓に視線を向けて『あの世界』のことを反芻してみる。 御坂美琴はいないが、一方通行は前人未到のレベル6、白井黒子は八人目のレベル5、御坂妹は普通の少女として生きている。 そして、インデックスの立ち位置は変わらない。 そこから始まる物語もあったかもしれない。美琴に追い回されることも因縁をふっかけられることも厄介事を持ちかけられることもない日常だけは平穏の物語。 でも、と上条は思った。 きっと、そこには『自分』は居ないのだ、と。 今の上条自身はもう覚えていないが、それは『七月二十八日以前の上条当麻』に戻るだけで、御坂美琴を鬱陶しいとしか思っていなかった生活でしかないのだ。 美琴のいる世界と美琴のいない世界、上条にとってそのどちらが幸せだったのか。 上条にはもう解っている。 上条は『美琴がいる世界』こそが楽しかった。そう思えないなら、死にかけてまでやった上条の行為はすべて無駄になってしまう。 現在の上条当麻と御坂美琴の関係は『今の上条当麻』が創り上げたものだ。妹達の一件を機に、美琴と深く関わり合うようにしたのは『現在の自分自身』なのだ。 本人は気付いていないだろうが、『今の上条当麻』は『前の上条当麻』を初めて否定したのかもしれない。 しばらくして、御坂美琴とインデックスが何やら言い合いながら上条の病室に戻ってきて、そこにあった美琴の姿に思わず感極まった上条が美琴に抱きついてしまい、それに激怒した白井とインデックスによって、本来であれば目を覚ませば帰れるはずだったのに三日ほど入院が延びた、という間抜けな出来事があったのだが、そのおかげで、上条は今、消灯時間を迎えた病室を抜け出して夜の屋上に来ていた。昼間は頭の包帯しかなかったはずなのに、この時間になると頬にも絆創膏が張ってあるのはそういうわけだ。 ちなみに美琴と白井の帰り際、美琴だけを呼びとめて「御坂妹と今度一緒に遊びに行ってやってほしい」と耳打ちしたら、了承は得られたが、なぜか顔を真っ赤にした美琴に怒られてしまったという小話もあるのだが、まあ、美琴の怒りが何を意味しているのかに今の上条が到達することはないだろう。 消灯時間を過ぎていることもあり、学園都市は闇にすっぽり覆われいてた。吐く息も白い。上空を見上げてみれば星一つ瞬いていなかった。 しかし、上条はそんな上空を見上げて考えていた。 前の世界の、正確には『美琴のいない世界の記憶』が残っている理由を。 (――――この世界は二度、変革されている。『美琴のいない世界』に変革されて、それを『元に戻した世界』が『この世界』だ) 上条はハッとした。 (『だから』か? 『だから』、俺の記憶が残っているのか?) 通常、『遡行の儀式』は意識を飛ばして『現在』と『過去』の自分を入れ替えるものだ。ゆえに『過去』の延長線上にある『現在の意識』は、変革された『過去』に上書きされてしまうのは自明の理なのである。そして、『幻想殺し』でも意識に作用する『異能の力』を打ち消すことはできない。なぜなら『幻想殺し』は『意識』に触れることができないからだ。 しかし、である。『遡行の儀式』そのものであれば『幻想殺し』は有効なのだ。 上条当麻が時間遡行した八月二十日。 ステイルの炎の剣は『意識のみ』に作用するものだったのかもしれないが、意識を失う前に首筋に走った『衝撃』が『意識』ではなく『遡行の儀式下にあった状態』を打ち消したものだとしたら? 八月二十日の上条当麻の意識は『遡行の儀式』によって入れ替えられていたものだったので、『自身の右手』は作用しなかったのだが『幻想殺し』で、首筋、もっと細かく言えば、よくマンガなどで表現される『延髄辺りに手刀』で意識を失わせる行為ならば、『幻想殺し』によって『意識』を、もっと言えば『遡行の儀式下にある意識』を『打ち消すこと』が『可能』なのだ。ただし、『意識』は『異能の力』ではないので、『元の時間』に強制送還される。 そして、世界広しと言えど、『幻想殺し』という能力を持っている者など、上条当麻が知る限り『一人しか』いない。 つまり、上条の記憶が残っている理由とは。 「ふっ」 上条は小さく鼻で笑った。 (てことはなんだ? 確か今居る七人のレベル5からレベル6に到達可能と判断されたのは一方通行だけだったはずだし、この世界の一方通行はもうレベル6になるつもりなんてないだろうから、学園都市史上初の『レベル6』はあいつなのか?) しかも、樹形図の設計者がない今、『彼女』はカリキュラムでも幻想御手でもなく『自力』で『レベル6』に進化するのだ。 少し笑ったまま、上条は空を見上げた。 「すまねえな。正確な時間を忘れちまったんであてずっぽうに飛んだんだがどうやら間に合ってよかったぜ。だから気にするな。俺もヤバいと思ったさ。まあ後のことは俺たちがなんとかする。いや、どうにかなることはもう分かっているんだ。お前にもいずれ解る。だから今は安心して眠れ」 上条は、あの時、聞いた言葉をもう一度、今度は自分で言ってみた。 遠くない将来、『八月二十日の自分』にかけなければならない言葉を。 そう。上条当麻はもう一度、『八月二十日』に行かなければならない。『インデックスが変革した世界』を『元に戻す』ために。 なぜなら、『今の上条当麻』は『世界を元に戻していない』。 あの場に現れた『彼女たち』と『上条当麻』が元に戻したのだ。 だとすれば、『今の上条当麻』もそうしなければならない。 正真正銘、『御坂美琴のいる世界』を取り戻すためには、絶対に行かなければならないのである。 もう一度、鼻で息を吐いてから振り返った。 「待たせたな。インデックス」 上条当麻は笑顔で呼びかける。 いつの間に来ていたのか、なんてどうでも良かった。すでにそこにいたことも知っていた。 そして、インデックスから声をかけてくることはないだろうということも分かっていた。 だから、考えをまとめてから声をかけたのだ。 「ごめんね…………今回の責任は全部私にあるんだよ…………」 昼間の態度はどこへやら。インデックスは伏せ目に神妙な表情で切り出した。 上条には分かっていた。 昼間のあの態度は、無理矢理の演技だったってことを。そうでなければ、美琴と一緒に出掛けるわけがない。何が何でもインデックスと美琴が上条の病室に残ることを主張し合って永久に平行線を辿り、結局は、上条の着替えが病室に届くことはなかったことだろう。 もっとも、美琴に抱きついた時に見せた噛みつき攻撃だけは本気だったようだが。 「私の……イギリス強制送還が検討されているんだよ…………」 上条は頭をもたげた。 「誰が検討しているんだ?」 「イギリス清教…………」 元々、インデックスはイギリス清教所属で、世界の魔道書一〇万三〇〇〇冊の保管庫だ。学園都市からすれば敵側の機密事項を手に入れていることになり、魔術サイドからすれば、それは忌々しき事態である。なんとか理由を付けてインデックスを取り戻したいと考えていてもまったく不思議はなく、今回の事件はいい口実だったことだろう。 何があったかは分からなくても魔術サイドには『遡行の儀式』をインデックスが協力者を得て発動したことだけは感知していたのである。『保管庫』が『我が侭』で魔術を使うなどあってはならない。もちろん、イギリス清教がインデックス個人の意識を尊重しないとは言わない。しかし、『魔術』を『我が侭』で使うということは、今後、『一〇万三〇〇〇』の魔術を『我が侭』=『欲望』のままに行使するかもしれない危険を孕んでしまったということにもなるわけで、これでは魔術サイドのみならず科学サイドどころか、全世界の危機でもある。 「前みたいに、一年ごとに私の記憶を消す術式を施すかも…………でも、今回は受け入れようと思っているんだよ。だって、私にも分かるもん。『魔道書一〇万三〇〇〇冊』を好き勝手に使われることの危険さは…………だから、私が『自由に魔術を使えない』ようにするのは当然かな……………」 インデックスは伏せ目のままで自嘲の笑みを浮かべた。 涙は浮かんでいなかった。「仕方ないよね」という諦観の笑みだった。 「『遡行の儀式』のことを教えてくれたろ? 嬉しかったぜ」 上条は礼を言いながら、怒りが込み上げてきた。インデックスにでもなければ自分にでもない。 しかし、インデックスはか細い声で続けてきた。 上条の言葉が聞こえなかった振りをして、 「私が学園都市に居る限り、今後も『魔術』を勝手に使わないって保証はないかも…………だって、また、私の『黒い思い』が溜まっていくってことだもんね…………それは、とっても危険なことなんだよ…………」 「くそったれと伝えろ」 「え?」 少し、ドスを利かせた低い声で吐き捨てた上条に、目をぱちくりさせるインデックス。 「ステイルや神裂を通じてでも構わねえ。インデックス、お前を連れ戻そうとするなら、いいか? 俺は暴れるぞ。何としてでもお前をこの学園都市、いや、俺の傍に居させてやる。俺一人だけじゃイギリス清教に対抗できないかもしれないが、御坂や一方通行、白井、御坂妹とかに無理矢理協力させてでも、お前を連れ戻そうとする輩を逆に返り討ちにしてやるぜ」 言いながら上条の怒りはふつふつと沸き立っていった。 (インデックスは過酷な運命を背負ってはいるが、やっと一つ、そこから解放されて今は『俺の傍にいること』で『自由』に生きる世界を手に入れたんだ。それを奪って、また元の木阿弥にしようなんて許してたまるか。インデックスはインデックスだ。一人の人間だ。危険物でも無機質な魔道書保管庫でもない『心がある』人間だ。そもそも、『完全記憶能力がある』って理由だけで『一〇万三〇〇〇冊』をインデックスに押し付けた奴が、それこそテメエを棚上げして自分勝手なこと抜かすな) ぐっと、上条は真剣な瞳をインデックスに向けた。 そこには勇ましい笑みが浮かんでいた。 「つべこべぬかすなら、俺がお前から『一〇万三〇〇〇冊の魔道書』の記憶を消してやる。さぞかしイギリス清教のお偉いさんは失望するだろうぜ。けど知ったことか。『魔道書』は『異能の力』なんだから、俺の『幻想殺し』でお前の脳に直接触れれば可能なはずだ。この学園都市には『頭を切開するくらい』大した所業じゃない医者もいるしな」 「とうま…………」 「ん?」 突然、インデックスの前に何か、白い綿毛のようなものがちらついた。 「雪?」 その正体に気付いたのはどちらだったのか。 二人は上空を見上げた。 しんしんと、静かに雪が降り始めた。 「何だ? 俺に頭を冷やせってか?」 上条は苦笑を浮かべた。 不意に、頭に重みを感じた。 雪が積もった、ではない。 振り向けば、そこにいたのはいつものインデックスだったのだが、いつもの格好ではなかった。 「とうまは、怪我人なんだから傷口を濡らすのはダメなんだよ」 自分のフードを上条の頭に乗せたのだ。 「役割が逆じゃね?」 言って、二人は笑った。 「とうま」 「何だ?」 降り注ぐ柔らかな雪の白は辺りが暗闇なだけにいっそう映えて見えた。 「――――ありがとう」 さて、実は上条には自分に投げかけられたセリフを口にする必要があった理由も存在する。 というのも、『八月二十日』に行くのは、『彼女』の服装からすれば、『近い内』ではないからだ。少なくとも一年、もしかしたら二年かもしれないが、『常盤台中学の冬服』で現れた以上、『今』でないことだけは明白なのである。何と言っても、現在の『彼女』はレベル4。『時間遡行テレポート』は『レベル6』でなければできないことを上条は知っている。 つまり、今のセリフを記憶してもらっておかないと、上条がいざ、『八月二十日』に行ったときに、忘れてしまっていては意味がないからだ。 それでは、『上条当麻』が『記憶が残っている理由』に辿り着くことがないからだ。 正直言って、上条は覚えている自信がなかった。 だから、 「ところで、ちゃんと覚えてくれたか? 俺のさっきのセリフ」 優しく聞いた。 「うん。でも、私にとっては二回目なんだよ」 「あ……そう言えば、あん時に『俺』が言ってたっけか」 「そういうこと」 インデックスもまた、この世界で上条当麻と同じ『八月二十日の記憶』を持っている者だ。 『八月二十日』に『上条当麻の幻想殺し』で、この世界に強制送還されたことは容易に想像つく。 インデックスは嬉しかった。 上条当麻が自分を『独り』にしなかったからだ。 『八月二十日』の『同じ記憶』を持っているのは上条当麻とインデックスの二人だけだ。 それが、インデックスの『寂しさ』という『幻想』をぶち壊したのだ。 「とうまも覚えていてよ」 「……………何を?」 「わざとだね?」 「いや……そういうわけじゃ…………というか、正直に言うと、俺はあの時にインデックスが言ってきたことの意味が分からなくてな…………」 「とうまらしいかも。でも今はそれでいいんだよ」 言ってクスっと、インデックスはにこやかに笑った。 インデックスはわざと追求しなかった。 なぜなら、インデックスには分かっていたからだ。 『インデックスが変革した世界』を『元に戻そう』とする理由はたった一つしかないのである。 この上条当麻は『その理由』に気付いていない。心の奥底でしか気付いていない。 だから、インデックスははぐらかすことにした。 現時点では。 インデックスの期待とは逆になる可能性の方が高いから何も言わないことにしたのである。 さて、三日が経って上条はめでたく退院できたのだが、残念ながらその三日間の欠席は正月三賀日以外の冬休みをすべて奪ってしまうものでしかなかったりする。 「不幸だ…………」 本日は十二月二十四日。 本来であれば通知表をもらって、憂鬱さを抱えながら、半日で帰路に就くことができそうなものなのだが、上条はやっぱり補習で帰りがいつもの平日となんら変わらなかったりしたので、とぼとぼ歩きながらいつものセリフをぼやくしかなかった。もちろん、宿題もたんまりもらっている。通常の冬休みの宿題以外にもたんまり。 「あーこの宿題にかかりきりになってるとまたインデックスが世界を変えたりしねえだろうな」 などと、はっきり言ってシャレにならないことを口にする上条。 やっぱり、今日もあの自販機がある公園へと歩みを進める。 古来より疲れを癒すのは、食料よりも水分補給なのだ。 よって、上条はいつも通り、自販機へと向かうため、階段を降りようとして、 「ちぇいさー!!」ガヅン!! 「おわ!? な、何だ!?」 突然、聞こえてきた掛け声と、何かがぶつかったような衝撃音に驚いて、結果、上条は思いっきり階段を踏み外す羽目になった。もっとも石で出てきたその階段は七段しかなく、結構緩やかなな角度なので大事に至ることはない。 大事に至ることはないが、それでも、『落ちた音』は結構大きい。 というわけで、 「なーにやってんのよ、アンタ」 上条当麻を呆れた視線で見下ろす御坂美琴がヤシの実サイダー片手にそこにいた。 常盤台の短いスカートでは、上条のように地面に伏していれば中身はもちろん見えるのだが、美琴のスカートの中は健全な青少年の夢を木っ端微塵にする仕様になっているので、もちろん、上条は嬉しくない。 「お前こそ、ここで何やってんの?」 「ジュースを貰いに来たに決まってんでしょ」 「んな窃盗行為を堂々と宣言するんじゃありません。はぁ……」 諦観のため息を吐いて上条は立ち上がる。 不意に上条のポケットからコロンと携帯電話が落ちた。 どうやら、転んだ衝撃でポケットにしまってあったものが、結構ポケット入り口近くに来てしまっていたらしい。 もっとも、この程度の衝撃でどうにかなるほどやわなものでもないが。 「おっと」 上条は何気に拾い、 そこにあるものに気付いて小さく笑った。 「なあ御坂、お前、今、暇か?」 「まさか。これから黒子や友達とクリスマスパーティーよ。ほら、そこに買い物袋あるでしょ。私は食料調達に出てたの」 「あーそう言えば今日はクリスマスイブだったな。うーむ。インデックスにケーキでも買ってやらなきゃならんかな?」 「で、何の用?」 「え?」 「ほら、アンタ、私に『今、暇か?』って聞いたじゃない。だから何の用?」 実のところ、『上条当麻を意識していない』ときの美琴は上条に負けず劣らず鈍感であり、普通、男が『クリスマスイブ』に『女の子』に「今、暇か?」なんて聞いてきたら、『お誘い』だと気付きそうなものなのだが、美琴はまったく気付かなかった。 「いや、暇じゃないならいいや。お前、急いでんだろ? こっちは後でもいい用事だからさ」 「あっそ。じゃ、私行くから」 「おう、またな」 言って、二人は別々の帰路に就く。 上条はこの場では美琴の気持ちを優先したのだが、やっぱりちょっと心残りが芽生えていたりする。 それでも上条は、この日常が嬉しかった。 御坂美琴がいる日常に安らぎを覚えていた。 とは言え、この心残りをを明日にまで引っ張れる自信はなかった。 宿題と補習のことに埋め尽くされる前にやっておかないと、後々、忘れそうだったから。 ゆえに上条は、インデックスが寝静まってから美琴に連絡を入れた。 「で、何の用?」 場所は夜の鉄橋。 自販機のある公園よりも、深刻な話がある時は大抵二人はここに来ることがなぜか習慣になっていた。 理由は、もしかしたら八月二十一日のことがあったからかもしれない。 先に来ていたのか。 御坂美琴は腕を組んだ仁王立ちで上条を迎えた。 ちなみに美琴が深夜の呼び出しに文句を付けなかったのは、以前、自分もやったことがあるからだ。 決して、上条のお誘いが嬉しかったからではない、と本人は強く主張する。 「ああ、ちょっとお前に頼みがあってな」 「三日前の話? それだったら明日、あの子と遊びに行く予定よ。冬だけどアイスも食べようって話したら喜んでたわ」 美琴だって馬鹿じゃない。 上条当麻が『クリスマスイブ』の深夜に『呼び出したから』と言って、こと上条当麻に限れば、それで何か、乙女が夢見るような展開になることは決してあり得ないことが分かっている。 だから、至極冷静に上条と向き合える。 もっとも、それが分かる自分がちょっと嫌だ、と思っているのだが。 「そうか。そいつは良かった」 上条は不意に『インデックスが変革した世界』の御坂妹を思い出した。彼女は確かに美琴とアイスを食べたいと言っていたが、それは、この世界の御坂妹は知る由もない話だ。これは上条の知らない話で、美琴と御坂妹しか知らないやすらぎに満ちたあの時間を二人はまた満喫したいのだ。 「でも、それじゃなくてだな。こいつを付けてくれないか、って」 言って、上条が取り出したのは携帯電話だった。 夕方には付いていたものが、今は外されている。 「…………こんなことで呼び出したわけ?」 「そうだ。どうも俺じゃ上手く結べないのか、すぐ取れてしまってな。だから、お前に結んでほしいと思ったんだ」 「あのちっこいのは?」 「インデックスができるわけないだろ。あと他のクラスメイトに頼むのは相当の覚悟と勇気がいる」 「…………そこまで?」 「となると、頼めるのはお前しかいない、だろ?」 「分かったわよ。じゃあ貸して」 「おう」 二人は互いに向かって歩き出す。 手を回せば、お互いの背中に届きそうな距離まで近づいて。 上条は美琴に携帯と、 『ゲコ太のストラップ』を手渡した。 ごそごそやることしばし。 「はい。これでいい?」 美琴が携帯に付いたストラップをひけらかすように、上条に突き付けて、 突然、ぎゅっと優しく、しかし力強く包み込むように上条当麻は御坂美琴を抱きしめた。 「へっ!?」 当然、美琴には意味が分からない。 こんな展開になればいいなとは思っていたが、まさか、実際になるなどとは微塵も思っていなかっただけに意味が分からない。 上条の肩に顎を乗せながら硬直するしかできなかった。 無理もない。 美琴は知らない話になるが、上条は美琴のいない世界に四日ほど身を置いた。 また、過去に遡り、美琴を救い出す際に、自分自身が『御坂美琴のいる世界』を心から望んでいたことに気付いた。 たとえ、それがどんな感情によるものなのかを理解できないとしても、 上条当麻は御坂美琴という存在を全身で感じたかったのだ。 三日前の病院では即座にインデックスと白井黒子に引き剥がされた。 でも今は違う。 インデックスも白井もいない二人だけの空間だ。 今、この場を逃してしまうと、今度はいつ、こういう場面に遭遇するか分からないだけに。 今、この場を逃してしまうと、もしかしたら、また、御坂美琴がいない世界に放り込まれるかもしれないだけに。 どうしても、一日でも一分でも早く御坂美琴を感じたかったのだ。 そのままどれくらいの時間、そうしていただろうか。 刹那のような永遠の時間。 上条は、そっと、美琴を離し、じっと彼女の瞳に映る自分を見た。 そこには、満足げな笑顔の自分がいた。 「え、ええっと…………あの…………」 そんな上条の笑顔を見て、何をされたかを理解して、 美琴の表情がぼんっという擬音が聞こえそうなくらい瞬間沸騰した。 「――――って、何してくれちゃってんのよ!? アンタは!!」 叫んで、この近距離から電撃をスパークさせる。 「お、おわ!?」 それを条件反射的に上条は打ち消した。 もうちょっとだけ美琴が素直になれたなら。 もうちょっとだけ上条が鈍感じゃないなら。 あのまま、雰囲気に流されて『次の段階』があったかもしれないが、この二人では所詮ここまでだ。 それに上条当麻はまだ、世界を元に戻していないし、インデックスの問いの意味も分かっていない。 だったら、全ての答えを出すのは『その後』だろう。 すべてが解決した『その後』の話になるのだ。 「で、話はこれでお終い?」 イラついたふりをしながら、顔をまだ赤くしたままで、上条と視線を合わせずにぶっきらぼうに聞く美琴。 「ま、まあな……そんじゃ気を付けて帰れよ!」 上条は少しキョドって言ってから、そそくさと美琴に背を向けて走り出した。 もちろん、先ほどの自分の行動を反芻して恥ずかしさがこみ上げたからではない。 もちろん、美琴がまた電撃攻撃する前に逃げ出したかったからに過ぎない。 美琴が上条の背中に何か言っていたようだが、上条の耳には入っていなかった。 「まったく……」 美琴は一人になった鉄橋をしばらく眺めてから踵を返す。 ちょっとだけ期待が叶ったことは嬉しかったのか、瞳を閉じた俯き気味のその顔は少しだけにやけていた。 上条にかけた声は届かなかったようだが、それは別に大したことじゃないし、また会った時に言えばいいだけの言葉だ。 「そんじゃま、帰るとしますか」 誰に言うでもなく、 しかし何かを振り払うように呟いた美琴は前を見据えて、 「あれ?」 いつの間にそこにいたのか。 二つの人影にいぶかしげな声を上げた。 一人は男、もう一人は女。 「どうしてアンタたちが?」 美琴の問いに答えたのは男の方だった。 「お前に話がある。信じられないだろうが信じてほしい話が」 「意味分かんない」 しかし、美琴は『付き合い切れない』という表情は見せなかった。 なぜなら、美琴はその二人が顔見知りだったからだ。 男は言った。 「お前とお前の周りの世界を守るために一緒に来てくれ」 美琴にはそれで充分だった。 なぜなら、今の男のセリフは美琴と白井とアステカの魔術師以外は知らないセリフだからだ。 それは、上条当麻の御坂美琴に対しての宣誓なのだ。 そして、目の前にいる男がそれを口にしたということは、そういう事態が降りかかっているということになる。 信じない訳にはいかなくなった。 「分かったわよ。でも、ちゃんと説明してくれるわよね?」 「もちろんだ」 ため息交じりの笑顔で言って、美琴は二人の男女とともに歩き出す。 御坂美琴の夜はまだ終わらない。 翌日、十二月二十五日。 この日は本当のクリスマスで、十字教創始者の生誕を粛々と厳かに祝う日となる。 敬虔なクリスチ……もとい、十字教の使徒であるインデックスも、この日ばかりはいつもの明るさはナリを潜めて、静かに祈祷と創始者への思いに没頭しているようだった。 何せ、朝ごはんを茶碗とお椀の白ご飯とみそ汁だけで済ませたのだから、この日のインデックスの気概は半端ではないことがよく解る。 さらには、上条が部屋を出る時もインデックスはイギリスの方向へ祈りを捧げていた。 それはイスラム教ではないのか? という気がしないでもないが、そこを突っ込んではいけない。それだけ今日のインデックスは『十字教の使徒』なのだから。 そんなインデックスの後姿を見送ってから上条は補習が待つ学校へと向かったのだ。 そして、補習も終えた夕方というよりはほとんど夜になっていた帰宅の途。 上条は、陸橋を渡りながら、不意に下にあった喫茶店が目に入った。 窓越しに見えるそこでは、御坂美琴と御坂妹の、談笑なんだか言い争いなんだかよく解らないやりとりが繰り広げられているようだった。傍から見れば本当に仲の良い双子の姉妹に見えていることだろう。二人の手元にはティーカップも見えた。中身が残っているかどうかまでは分からない。 「良かったな。御坂妹」 上条は聞こえることがない二人にそう告げて、その場を立ち去った。 そこには『変えられた世界』の御坂妹の願いを『この世界』の御坂妹が叶えていた姿があった。 ふと、前を向けば、知った顔が歩いていた。 「よう、久しぶりだな」 「あン? 前に会ってからそんなに時間が経ってたか?」 相手は白い髪に赤い瞳の一方通行だ。 首にはチョークが巻いてあり、右手にはトンファーのような、長い棒から横に取っ手が付いたデザインの杖。ちょっと歩くのも辛そうだが、彼の表情にはそんな憂いは微塵も感じられなかった。 なぜなら両脇に二人の女の子がいたからだ。 一人は御坂美琴をそのまま十歳にしたような少女。 もう一人は、逆に御坂美琴をそのまま三年ほど成長させた少女。ただし、その目つきはすこぶる悪い。 「買い物か?」 「まァな」 ふと、上条の脳裏にレベル6の一方通行が浮かんだ。 彼の望みは、そのままこの一方通行の現実だ。 「サンタさんからはプレゼントをもらったんだけど、一方通行からもプレゼントがほしいっておねだりしたの、ってミサカはミサカはあなたに報告してみたり」 「小さい女の子の要求は断れないもんねー親御さん? 『サンタ』さんに負けちゃいられないってかにゃん?」 「ほえ? 番外個体はサンタさんに会ったの? ってミサカはミサカは羨望の眼差しを送ってみる!」 「ええ、ミサカは会ったことあるよ。何なら上位個体も会わせてやろうか?」 「是非! ってミサカはミサカは全身で喜びを表現してみたり!」 「くっだらねェこと言ってンじゃねェ。さっさと行くぞ」 そんな三人の様子に上条は小さく笑った。 「うん。じゃあね」 「バイバイ、ヒーローさん」 一方通行に次いで打ち止めと番外個体も上条の脇をすり抜けていった。 上条当麻は再び前を見据える。 と、同時に。 「この腐れ類人え、もとい! 上条さん! お姉さまを見かけませんでした!?」 いきなり、胸倉を掴まれた。 相手はもちろん誰か分かっている。 「そこまで言ったら訂正もクソもないと思うぞ」 「ええい! そんなことはどうでもいいですの! それより、お姉さまは一緒ではなくて!?」 「いいや、今日は一緒じゃない。つか、俺と御坂ってそんなに一緒にいるイメージがあるのか?」 「いいえ、そうではありません! ただ、わたくしやわたくしのご友人二人が知らないとなると、あなたと一緒にいる可能性が一番高いと思いましたの!」 「何だよそれ」 「とりあえず、あなたが知らないのであればよろしいですわ。また探しに出るまでですの!」 上条を解放して、白井は踵を返した。 その背中に上条は言葉をかける。 「なあ、白井」 「何ですの? 今、忙しので手短かにお願いしますわ」 「頑張れよ」 「意味が分かりませんの」 少しジト目を向けて白井黒子の姿は掻き消えた。 上条は、美琴を見つけるのを頑張れよ、のつもりで言ったのか、レベル6に成れるよう頑張れよ、と言ったのか。 おそらく両方なのだろう。何と言っても本人もどっちの意味で言ったのかが分からない。 そして、上条は再び歩き始めた。 力強く歩みを進めるその表情は凛々しい笑顔が浮かんでいた。 上条は笑わずにはいられなかった。 みんなが求めていた世界がここにある。そして、それは決して失ってはならないものだという確信もあった。 上条当麻はもう一度、『八月二十日』に行って、世界を復活させなければならない。 その決意を固めるには充分の光景だった。 (でも、まあ…………) と上条は思う。時間はまだあるかもしれないが、実は世界を復活させるためにもう一つ、重要なイベントが存在する。 上条が『そのこと』に気付いたのは昨日だった。『通知表』を見て、それを知った。 白井黒子と一方通行を『自分の目の前』で引き合わせなければ、これまた世界は元に戻らない。 そのためには、十二月二十日の『宿題』をほぼ全問正解させなければならないのだ。 (俺の最底辺の成績を、ほとんど最高レベルに引き上げなきゃならんとはね…………) 苦笑を浮かべて、上条当麻はインデックスの待つ自室へと帰っていった。 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 時は、セミの大合唱がいまだ鳴り止まない八月二十日。 (昨日の攻防戦で継続を諦めたのか、一基だけでは実験は継続できないのか) 少女は昼の学園都市を歩きながら、心の中で半信半疑ながら考える。 (分からないけど、奴らを撤退まで追い込んだ…………) それでも、その事実は少女の胸の内に夜明けを連想させる明るさが広がってきた。 まだ、どこか現実味がないとは言え、 (やった……? やった!?) 夏の日差しだというのに、木漏れ日が心地よくなってきた。 (やらなきゃいけないこと、まだまだ沢山あるけど) 実感すると、全身に歓喜の感情が波紋のように広がっていく。 (『あの子たち』はもう……死ななくても…………) ふと上空を見上げた それを考えると、安堵感にも似た気持ちが膨らんでくる。 そのまま、ぐっと前を見据えた。 心に浮かんだのは三人の顔。 一人は、頭がお花畑のまだ幼さが残るショートカットの少女。 一人は、レベル0なのに自分よりも『強い』と感じるロングヘアの少女。 一人は、誰よりも自分のことを心配してくれるツインテールの少女。 少女は、少し笑った。 (みんな……今、帰るから…………) それは『現実へ』という意味。 不意に横手から『ガチャガチャ』という妙な音が『聞こえて』きた。 まったく周りのことが見えなくなっていた少女が『現実』に帰ってきた証でもあった。 ふと、そちらに視線を向けてみれば、 「あれーっ!? おっかしーなぁ」 そして――――少女は少年と出会った―――― 前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/御坂美琴の消失
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【名前】御坂美琴 【出典】とある魔術の禁書目録 【種族】人間 【性別】女 【口調】 一人称:私 二人称・三人称:アンタ、~さん 【性格】 一言で言うならばツンデレ。粗暴で負けず嫌いだが、根は善良。 年上に対しては基本敬語だが、人(上条等)によってはタメ口をきいたりする。 【能力】 電撃使い(エレクトロマスター) 自らの能力で発電した電気を操る能力。 光速の電撃の槍、落雷、電気信号を介したハッキング、警備ロボの操作、 ネットを介した遠隔破壊攻撃、砂鉄や鉄骨を自在に操る電磁力、水を電気分解しその水素により飛行など汎用性の高い特技を持つ。 超電磁砲(レールガン) 御坂美琴の切り札であり、通り名。 物体(主にコイン)に電磁加速を加えて放つ超電磁砲が十八番かつ決め技。 【備考】 名門お嬢様学校の常盤台中学に通う14歳。 学園都市で7人しかいないレベル5(超能力者)の1人で、第3位。 当初はレベル1であったが、数々のカリキュラムをこなして今の地位に上り詰めた努力家。 お嬢様学校に通うにもかかわらず自販機への蹴りでジュースを出したり、スカートの下には短パンを着用していたり、 コンビニで漫画の立ち読みを楽しんだり、年上の上条にタメ口を聞いたりとその言動は優雅や品行方正とは到底言い難く、 周りからは「全くお嬢様っぽくない」などと言われる。 以下、マルチジャンルバトルロワイアルにおけるネタバレを含む 対応するregion、endregionプラグインが不足しています。対になるようプラグインを配置してください。 御坂美琴の本ロワにおける動向 初登場話 0021 ruins 死亡話 --- 登場話数 7話 登場話一覧 【とある魔術の禁書目録】 スタンス 対主催 現在状況 一日目午前の時点で生存 参戦時期 キャラとの関係(最新話時点) キャラ名 関係 呼び方 解説 初遭遇話 カズマ 敵対 あんた 交戦するが、生き残る事を優先し撤退する 0027 我が﨟たし悪の華 衛宮切嗣 友好 衛宮さん 協力してクロコダイル達を襲撃するが、"砂嵐『重』"から美琴を庇い大ダメージを負う 0071 同じ夜明けを見ている サー・クロコダイル 敵対 雷撃によってクロコダイルの首輪が爆発し、結果的に殺害する 0071 同じ夜明けを見ている ライダー(イスカンダル) 敵対 クロコダイルもろとも奇襲を仕掛けるが逃げられる 0111 殺人連鎖 -a chain of murders-(後編) レッド 敵対 あんた 友好関係になりかけるも、混乱のため攻撃して逃げる 0123 私らしくあるためのImagine(幻想) ハクオロ 敵対 あんた 友好関係になりかけるも、混乱のため攻撃して逃げる 0123 私らしくあるためのImagine(幻想) ラッド・ルッソ 敵対 地下で襲撃され、その後乱戦 0133 Radical Good Speed ストレイト・クーガー 友好 地下鉄で乱入、逃がしてもらう 0133 Radical Good Speed リヴィオ・ザ・ダブルファング 敵対 地下鉄で乱入、乱戦 0133 Radical Good Speed ブレンヒルト・シルト 敵対 共同戦線を張るが、改心のため敵対 0144 UN-SYMMETRY
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/御坂美琴の消失 第3章 「ここは本来男子禁制ですのよ」 「申し訳ございません、とミサカは心より謝罪申し上げます。しかし、ミサカはあなたに連絡する手段しか知らされていませんでしたからこうするより他ありませんでした、とミサカは弁解します」 「まあ仕方ありませんわ。行動そのものは正しかったことは確かですの。あのまま、放置してましたらこの方は風邪では済まなかったかもしれませんし」 「…………広いお部屋…………」 「こちらの方は?」 「上条さんにまとわりつく金魚のフンです、とミサカはきっぱり宣言します」 「何言ってるかな!? 金魚のフンはそっちなんだよ!! 私はとうまと一緒に住んでる関係者で短髪より深い間柄なんだから!!」 「…………だいたいどんな方か分かりましたわ。では、上条さんが目覚めるまでお待ちくださいな」 「当然!」 「はぁ……それにしても血は争えませんわね。よもやあなたもお姉さまと同じ殿方に想いを寄せておられましたとは…………」 「血?」 「ミサカは、先ほど上条さんが口にされました名前、『御坂美琴』の妹なのです、とミサカは今回ばかりは何の裏も無くあなたにお教えします」 「ふうん。それで『みさか』なんだ」 上条当麻は同じ夢を見ていた。 一昨日見た夢、八月二十一日の操車場。 そこではやっぱり、御坂美琴が一方通行に立ち向かっていて。 上条当麻は柵越しにそれを眺めているだけで。 しかし、以前とは違い、上条は夢の中で思った。 (もしかして、この光景が真実なのか…………?」 夢の中の美琴は一方通行を押していた。 (実は、あの日、俺は鉄橋で御坂の電撃にやられて気絶してしまったのか…………?) 一方通行の能力は『ベクトル操作』、全ての運動方向を操る最強の力。 (目を覚ました俺は美琴を追いかけたけど、すでに美琴が一方通行に戦いを挑んでしまっていて、俺はここで二人の圧倒的な力の前に竦んじまっていたのか………?) しかし、美琴の電撃や砂鉄の攻撃が一方通行にヒットする。 決して当たるはずのなかったその攻撃が一方通行を追い詰めていく。 (一方通行が創り出したプラズマは俺に向けてではなく、御坂に向けてのものだったのか? 俺は…………ブルって御坂を見捨てたことが真実だったのか………?) 追い詰められた野獣の究極のインスピレーションが一方通行の力を飛躍的に押し上げる。 頭上で手を広げた先には巨大な光の塊が漲らんばかりにうねっていた。 (御坂は…………この、全てを呑み込む高熱の光にやられてしまったのか…………?) 一方通行の創り出すプラズマの光が激しさを増し―――― 上条当麻は、やっぱりここで目を覚ますのだった。 「とうま?」「上条さん?」「上条さん、とミサカは心配げにあなたを覗き込みます」 上条が目を覚ますと、そこには六つの瞳が上条を見つめていた。 「ここは…………?」 「わたくしとお姉さまの妹君の部屋ですわ」 まだ、ぼぉっとしている上条の問いに毅然と答えたのは白井黒子だ。 「大丈夫? とうま」 「何ともありませんか? とミサカはあなたを気遣います」 インデックスと御坂妹が神妙に問いかけてきて、 「いや、別段何も…………」 言って、上条は半身を起こす。 一度キョロキョロ見回すと、見慣れない部屋にいることに気付く。 どこか高そうなホテルの一室のような趣きだった。入口の近くにはユニットバスらしき扉、自分が横になっていたベッドの隣にもベッドでその大きさと優雅さは上条の部屋のものとは比べ物にならず、部屋そのものの広さも上条の部屋の倍はありそうだ。部屋の片隅には大きなぬいぐるみ。この部屋にはどこか不釣り合いなデザインの荒々しいクマのぬいぐるみなのだが、どこかさみしげに座っているように見えた。アレは美琴のぬいぐるみなのだ。それは上条も知っている。だから、もう二度と帰らない主人を甲斐甲斐しく待っているペットのように見えて寂しげなのだろう。美琴の私物はすべて家族が持っていっただろうが、あのぬいぐるみは置いていかれたのだろうか、それとも白井が美琴の形見にと頼み込んで譲り受けたものなのだろうか。 もっとも、その真意を確かめる気すら今の上条には沸かなかった。 「そっか…………倒れた俺をここまで運んでくれたのか…………サンキューな白井、とお前らも…………」 「どういたしまして。しかし何がありましたの? 意識が遠のくほどの出来事とは」 「…………」 上条は無言で頭を垂れて目を伏せる。その表情も沈み切っていた。 無理もない。 一日前はタチが悪すぎる冗談だと思った話が実は真実だった、これほどショックなことはないだろう。 ましてや上条当麻は八月二十一日に御坂美琴と妹達を助けることを決心し、その決意を貫き通した、と思っていたのに、見た夢の内容も相まって、本当の現実は美琴を見捨てたかもしれないと思い始めているのだ。 自責の念に押し潰されそうになっても仕方がなかった。 「それがね、とうまが私に『御坂美琴って女を知っているか?』って聞いてきたから『誰なんだよ?』って答えたら倒れたんだよ。本当は問い詰めようと思ったんだけど、とうまのショックがあまりに大きいみたいだから後にすることにしたんだよ」 「はあ?」 「ところで、あなたはお姉さまを知っておいでなのですか? とミサカは率直に疑問を口にします」 「まあ、な…………」 上条は曖昧に返すしかできなかった。 確かに上条当麻と御坂美琴の間には浅からぬ因縁がある。初めて出会ったあの日から今日に至るまで、幾度となく追いかけっこをして、幾度となく共闘して、幾度となく(当人たちは無自覚なのだが傍から見ればそうとしか見えないくらい)キャッキャウフフをかましてと、実に濃密な関係を築き上げ、いつしか上条にとっては気が付けば自分の傍で頼りになるパートナー、くらい信頼できる相手となっていた。それでも時たま関わり合いたくない、と思ってしまうことが無いことも無いのは、まあ美琴の性格によるものなのだろう。それはある意味仕方がない。誰だって高圧電流に巻き込まれたくはないものだ。例え、その電撃を無効化できるとしても、アレは音だけでも結構心臓に悪い。 が、あくまでそれは上条当麻の記憶の中だけでしかないのが、この世界だった。 この世界では、上条当麻と御坂美琴は出会ってはいるが、御坂美琴は八月二十一日に殺されてしまっていて、それ以後、会っていないのが現実なのだ。 それは極めて遺憾ながら、上条のいつも傍にいるインデックスによって証明されてしまった。 白井は少々、上条と美琴の因縁を知っているようだが、残念ながら七月二十八日以前の記憶が無い上条自身は知らないことだ。 だから、上条は曖昧に返すしかできなかった。 「…………つまり、上条さんは三日前に私が教えて差し上げましたことを信じてなかった、というわけですか…………はぁ…………」 盛大な溜息を吐く白井。 「でも、どうして信じていただけませんでしたの?」 「…………」 上条は無言。どうにも答えられないようである。 もっとも白井には上条の気持ちがなんとなく分かる。おそらくは自分と同じなのだろうと推測はできる。 ただ、問題は、八月二十一日から四ヶ月ほど経過していることであり、なのにどうして今になって上条当麻が御坂美琴のことを気にかけたのかがまったく分からないのだが。 とは言え、今の上条からは芳しい答えは得られそうにない。そこでもう一つの疑問を口にした。 「そう言えば、妹さん、あなたはどうして上条さんとお知り合いになりましたの? わたくしはあなたと上条さんがお知り合いだとは思ってもみなかったのですが」 何気なく御坂妹に問いかける。 刹那、上条の脳裏に閃光が走った。 (そうだ! 御坂妹と出会ったのは美琴と一緒にいたときが最初だ! しかも御坂妹はミサカネットワークで繋がっている。なら――――!!) 一抹の期待を抱いて上条も御坂妹へと視線を移した。 そんな上条の期待の視線を受けて。 御坂妹は少し、顔を赤らめて、 「その…………ミサカが道端で見かけた猫に餌をやろうとしていたところを見られて、とミサカはまずは出会いから語ります」 「…………」 「でも、ミサカの体から発せられている微弱な磁場によって猫に怯えれらてしまうので餌をやることも拾うことも叶わず困っていたところ、上条さんが猫の面倒を見てくれることを承諾してくださいました、とミサカは上条さんの優しさを思い出して胸を熱くします」 「基本、困っている人は放っておけないとうまらしいかも…………」 「それでその後、一緒に本屋へ行って猫の飼い方という本を買ってもらって、ミサカに猫を抱かせてくれて、という具合にミサカの願望を叶えてくださった優しさにミサカは…………」 「あー……そこで純情乙女っぽい仕草はよろしいですわ。なんだか砂を吐きそうになりますの…………」 語尾が途切れた御坂妹の回想をインデックスと白井はどこかやさぐれて聞き流していた。 いったいどこの恋愛物語のシチュエーションだっつーの。 という声を二人は脳内で聞いた。 しかし、上条はとてもそんな気にはなれなかった。 (その経緯は確かに間違ってねえ。現実にあったことだ。けど、やっぱり、美琴が一緒にいたときの記憶は無い、か…………) 「覚えてませんか? とミサカはどこか恐る恐る問いかけます。ミサカにとっては重要なイベントなのですが、あなたの落胆ぶりを見るにつけますと覚えていないのでは? とミサカは恐々とします」 「いや…………覚えているさ…………」 口にできるのはそれが精いっぱいだった。 その心の内では、 (それは俺の中では初顔合わせのときの記憶じゃなくて、その翌日の記憶なんだがな…………) そう付け加えていた。 何でこんなことになってやがるんだ? 何が起こっているんだ? 上条は、頭の中でそんな言葉がずっとリピートされて渦を巻いているような気がした。 意識が戻ればいつまでも女子寮である常盤台中学の学生寮にいるわけにはいかない。 上条は、キャリアウーマンを連想させる眼鏡の寮監殿に御礼を言って立ち去った。 御坂妹はどこか名残惜しそうな表情を見せていたが、それはインデックスが上条を無理やり引っ張っていって遠ざけた。 そして歩くことしばし、 「とうま、なんだか一昨日くらいから変だよ? 何か悪いものでも食べた?」 「それだったら腹痛になってるわ。いや、そうじゃなくて…………」 「んー?」 しばらくの間、二人の足音だけが夜の町に響いて、 「ちょっと……混乱しててな…………何か、ついこの間までの生活がここ三日間で一変しているような気がして…………」 「疲れてるんだよ、とうま。とうまはいつもいつもいつもいつもいつも厄介事に首を突っ込んでボロボロになって帰ってくることが多いもん」 「…………厄介事?」 「そうだよ。私を助けてくれた後も、何回も何回も何回も魔術絡みの事件に巻き込まれたし、それも日本のみならず海外にまで出ることもあったし、そんな疲れが溜まって表層に出てしまってるんだよ」」 「はは……その所為で進級が危なくなってるんだよな……そうだよな…………」 苦笑を浮かべる上条当麻。 「…………ごめんね」 「あん?」 「私と関わったばかりにとうまをいつも危ない目に合わせて…………」 「何言ってやがる。そりゃ俺が選んだ道だ。お前が悪びれる必要はねえよ」 「でも……!」 「だいたい。色んな厄介事に巻き込まれちゃいるが、お前以上の厄介事なんてそうそうねえよ」 「ああ! それは酷いんだよ、とうま!」 「ははっ」 インデックスに明るさが戻って上条の表情にも笑みが浮かぶ。 もっとも、それは単にインデックスを元気づけることに成功したことに対する笑みでしかない。 ふと、前方を見てみれば、無意識だったのか、いつの間にか御坂美琴と出くわすことが多かった鉄橋に来ていた。 何の気なしにポケットの携帯電話を取り出す。 やっぱり、美琴に貰ったゲコ太のストラップはない。 ぎゅっと握りしめて、再び前を見据える。 ――――!! 前方に人影を感じた。 いや、前方だけではない。 鉄橋の柱の傍や地面にも。 左手を後ろから握られた気さえした。 鉄橋のあらゆる場所に人の気配を感じた。 その人影は亜麻色の髪を翻したり、コインを弾いたりしていた。 表情は――――よく分からなかったが、それは上条が間違いなく知っている人物だった。 「み、さか………?」 しかし、上条が戸惑い気味に名前を呟くと、その気配は全て霧散した。 「とうま?」 傍にいるのはインデックスだけ。 心配げに声をかけられて、ハッとしてからインデックスを見やる。 そこにはインデックスの不安げな眼差しがあった。 今にも泣きそうな、そんな碧眼だった。 (馬鹿野郎…………何、インデックスに心配させてやがる…………) 心の内で呟いてから、 「すまん……お前の言うとおり、俺は疲れているのかもな…………」 かぶりを振ってから自嘲の笑みを浮かべて上条当麻は再び歩き出す。 この鉄橋は、あの自販機がある公園以上に御坂美琴と上条当麻が邂逅した場所。 しかも、そのほとんどが何かしらの重要なイベントがあった場所。 だから、上条はこの鉄橋に美琴の幻覚を感じたのだろう。 (くそ…………普段、あれだけ関わり合いたくない、と思っていたくせに、いざ、現実になったら、何でこんなに落ち込んでんだよ俺は…………) ぎりっと歯を食いしばり、 (そりゃ、インデックスに匹敵するくらいあいつの印象は強いさ。頼れるし、力になってくれるし、俺のピンチに駆け付けてくれる唯一の奴だけど、普段はそこまで意識したことねえじゃねえか。なのに何で――――) 上条にはこの気持ちの意味が分からなかった。 今は――――まだ。 翌日、上条は月詠小萌より特例中の特例ということで補習も宿題も免除された。 前日の宿題の回答が全問正解だったことが、ある意味、小萌に慈悲の心を与えたのかもしれない。 これなら、一日くらい休みをやっても追いつけるかもしれない、そう思わせることができたのだろう。 したがって上条は今日はまっすぐ自宅へ帰ろうと決意した。 毎日毎日遅くなる上に大量に出される宿題の所為で、ろくすっぽ相手できないインデックス構ってやろうと。 昨夜、柄にもなく自分を心配してくれた少女に報いてやろうと。 そう心に誓いながら帰路を歩く。 とは言え、上条が決心したことは、だいたいにおいて外的要因によって崩されることが多々ある。 例えば、後ろから声をかけられるとか。 その相手が、これまた昨夜、お世話になった人物からとか。 「上条さんも今、お帰りですの?」 「白井……あー……お前も今、帰りなのか…………?」 「…………何やら、嫌なモノを見た的な表情をされてますわね」 ジト目で言いながらも白井は、少し早足で歩いて上条と肩を並べる。 「帰る方向が同じなら、途中まで一緒に帰るか、って聞くべきシチュエーション?」 「ほほう」と白井は少し目を細めてから、 「常盤台のお嬢様に向かって、ただ何となくで『一緒に』と仰いますの? ふふっ、その位置に立つために一体どれほどの殿方様たちが努力を重ねているのか分かってらして?」 「…………………」 「ん?」 白井の軽口を聞いて押し黙ってしまった上条に、白井は怪訝な視線を向ける。 無理もない。今の白井のセリフは八月二十一日に美琴が上条に言ったセリフだ。 この世界には存在しない御坂美琴を思い出してしまうセリフに上条はやるせない気持ちを抱いたのだ。 しばしの間、沈黙が流れて、 「――――そのお顔、三日前にお会いした時から何度か見せられていますが、その意味を教えていただけないでしょうか?」 「え?」 「あなたは時折、不思議な表情をされますの。まるで今の自分を否定しているような、今ある現実を否定しているような、――――とでも申しましょうか。とにかくどこか現実逃避をさらに重くしたような表情をされますわ。その理由を知りたいですの」 上条は再度、押し黙った。 昨日までの三日間。 上条当麻は誰にも自分が知っている現実と今の現実が乖離していることを話してはいない。 正確に言えば、三日前に白井には話してしまったが、それは今の現実を認識する前の話だった。 上条の思いとは違う『現在』を認識させられた今となっては話すことを躊躇っても仕方ないと言える。 なぜなら白井は上条から聞いた話を戯言と一蹴した。 で、あるならば、同じ話をしても信じてもらえるわけがないし、信じてもらえないだけならまだしも、精神病棟に放り込まれるならまだマシだが、今後、白井黒子を皮切りに、御坂妹、インデックスと上条を異常者扱いして、自分から離れていってしまう危険性を秘めてしまっている。知らない世界に一人にされる孤独感は想像を絶することくらい、予知能力が無い上条でもそれは容易に予想は付く。 さすがにそれは嫌だ。人とは一人では生きていけないものなのだ。 かと言って、誰にも話さず自分の内に溜め込んでおくのもストレスで発狂してしまうかもしれないことは否定できない。 では、どうすれば? 「んー? お前には一度話したろ? 俺とお前が初めて会ったのは九月一日じゃなくて――――ああ、日は言ってなかったな、八月二〇日、俺と御坂が公園のベンチに並んで腰掛けているときだって」 冗談っぽく言うことだった。そうすれば白井は呆れてこの話を打ち切るだろうということを見越した上で。 「また、その話ですの? はぁ…………あなたは夢と現実に境界線を引くべきですわ」 予想通り、白井は答えて、 「――――とでも言うと思いましたの?」 予想外に、白井は続けた。 「んな!?」 「何を驚いてらっしゃいますの? まあ、確かに以前のわたくしはあなたの話を一蹴しましたが、三日も経てば多少は頭が冷えるというものですわ。そして、思い返してみますとあなたの話の中でどうしても分からない部分がありましたの。それを確かめるためにあなたに会いに来たのです。ですから、今日、あなたとお会いしたのは偶然ではありませんわ」 はっきり言って、白井の言葉は意外だった。 もっとも、だからと言って、今はまだ話すことはできない。その理由は先に述べた通りだからだ。ならば、まずは白井が気付いた分からない部分について聞いておくべきだろう。 「俺の話の中?」 「そうですわ。三日前に上条さんが話された、わたくしとあなたの邂逅のお話の中で、もちろん、今でも信じることはできませんが、たった一つだけ、逆の意味で信じられない話がありましたの」 「信じられない話の中で信じられない話?」 「ええ。上条さんの話の中にたった一つだけ、わたくしとお姉さましか知らない『わたくしの知っている現実』のお話がありましたの。それはわたくしが『お姉さまが事ある度にあなた様のことを話されている』と言う前に、あなたが『あの馬鹿』とお姉さまが評していることを仰り、また『上条さんのことを散々悪く言っていた』とお姉さまが言っていた、という件【くだり】ですわ。この話だけは『現実にあって』、しかも、『わたくしとお姉さましか知らないこと』ですの。わたくしがお教えする前に上条さんが先に話されましたでしょ? お姉さまの上条さん評を、どうして上条さんが知っているのか、そこにわたくしは疑問を感じるわけでございます」 「…………」 「この場合、考えられる理由は二つ。一つはお姉さまが上条さんにそう話したことがあったか、あるいは――――」 白井は立ち止まった。 つられて上条も立ち止まる。 一陣の風が二人の間を吹き抜けて、上条と白井の髪を少し強く揺らす。 「あなたの言っていた現実が正しくて、わたくしが上条さんに伝えたか――――ですわ」 白井黒子は上条当麻を射抜くような視線を送りながらそう言った。 しばし沈黙の後、 「で、どちらですの? あなたはお姉さまからお聞きしてましたの? それともわたくしから聞きましたの?」 白井から切り出した。 上条は呻吟する。 ここで『お前から聞いた』と言うのは容易いが、『御坂ら聞いた』と嘘を吐いても別に構わないところでもある。 なぜなら、『御坂から聞いた』ことにしてしまえば、少なくともこの世界でも上条は孤独に陥ることがなくなるからだ。おそらく白井は『御坂から聞いた』との答えを待っているだろうし、言えば、白井は自身の気の迷いと結論付けて、二度とこの話はしないことだろう。 そしてそれはそのまま上条が今の現実を受け入れることも意味する。 確かにこの世界に御坂美琴はいない。だが、だからと言って、それが上条の生活に多大な影響を及ぼすかというと、そうでもないことは分かっている。 それは、一方通行の件以後、何度か美琴に関わる事件や、何度か美琴の助けを必要とした事件もあったが、それらすべてをクリアしているということは、今現在があることで証明されてしまっているからだ。美琴絡みの事件は美琴がいないことで無かったことになっているだろうし、美琴の助けを借りた事件はおそらくだが、同系統の能力者である御坂妹が代わりを務めた可能性が高いと思われる。 だからこそ、今この場での正しい答えは『御坂から聞いた』だろう。それですべてが平穏無事に収まるのだから。 しかし、である。 この世界はそれでいいかもしれないが上条当麻はどうなのだ? 上条当麻自身はどうなのだ? 今、『御坂から聞いた』と嘘を吐くこと自体は簡単だが、それは上条が今後、ずっと嘘を吐き続けて生きることを意味するのだ。 しかもそれは、この世界に生きる全ての者に対して、だ。 インデックス一人にさえ嘘を吐き続けてきたことを後悔したのではなかったのか。 それに今、白井はまだ疑いの方が強いだろうが、本当のことを話せば協力してくれるのではないかという思いが上条の頭を過った。 白井黒子は御坂美琴を寵愛している。 それがいささか行き過ぎた方向だろうと寵愛していることに変わりはない。 ならば、御坂美琴が存在する世界を肯定してくれるのではないか。 本来在るべき形の世界を選んでくれるのではないか。 上条当麻の心は揺れる。 そう。ここが分岐点。 この世界に留まるか。本来の世界を取り戻すか。 二度目はない。 今、この場の回答のみが今後の決定権を有している分岐点なのだ。 なぜなら、白井は『御坂から聞いた』と言ってしまえば、二度とこの話をしない。それは確信を持って言える。今この場の答えをひっくり返すほどの『物的証拠』を持ち出さない限り、実は嘘でした、と言っても通ることはない。発言がぶれてしまえば信用度は皆無となるからだ。 インデックスと御坂妹は元より上条の言葉を信じることはない。 完全記憶能力を持つインデックスは上条の話を、たとえ上条のことを心から信じていようとも、自分の記憶を疑うことはない。よって、上条が「今の世界は俺の知っている世界と違う」と言おうとも聞いてもらえることはあり得ない。 御坂妹からすれば、八月二十一日に御坂美琴が殺された、となれば相手は一方通行しかいないわけで、しかもそれは御坂妹自身の実験の日なのだから自分で見ている以上、百聞は一見に如かず、だから如何に上条の言葉であったとしても信じられるものではない。 そして、直接、上条当麻と御坂美琴が知り合いである、ということを知らないクラスメイトや月詠小萌、他多数は最初から論外なのである。もしかしたら、本当にもしかしたらだが、学園都市の統括理事会、さらにその上に君臨するアレイスターは気にかけていたかもしれないが、アレイスターは多少のイレギュラーであれば修正して目的を達成しようとするだろうから、御坂美琴がいるいないにそこまで執着することはないだろう。まあ、上条がアレイスターに謁見する、などというイベントは、起こるとすれば、それは、上条が相当、学園都市の闇に最接近した時だろうから、このような仮定は最初から無意味だ。というか、学園都市のことだから御坂美琴の死体から脳なりDNAマップなりを人知れず回収して、ある意味有効利用している可能性の方が高いのではなかろうか。 つまり、今、白井に突き付けられたこの選択肢の回答以外で、上条当麻は元の世界に戻る可能性を得ることはないのだ。もちろん、まだ元の世界に戻す方法を見つけ出しているわけではないのだが、それはさておき。 ゆえに上条の答えは、 「お前から聞いた…………と言ったら信じられるか…………?」 重々しく、呟いた。 ともすれば聞き取れないかもしれないほどのか細い口調で呟いた。 どちらとも取れるギリギリのラインの答えだった。 これほどまでに緊張し、また言葉を紡ぐのに躊躇ったのは、インデックスに記憶喪失のことを告げた時以来だろう。 「そう、ですか…………」 白井の返答を上条はどういう思いで聞いただろうか。 もちろん、上条には分からない。 哀れんだ瞳を向けられれば、まだ分からないでもないが、残念ながら白井は前髪の影を濃くしてその奥に瞳を隠している。 で、あるならば、白井が何かを口にしない限り、分かるはずもない。 重苦しい沈黙が続く。 その沈黙を破ったのは―――― 「むっ!」 先ほどまでの神妙な態度はどこへやら。 白井は上条を、正確に言えば上条の後方をいきなり睨みつけた。視界にとある人物を捕えたのだ。 「何だ?」 つられて上条も肩越しに振り返る。 そこにいたのは―――― 「見つけましたわよ!!」 吼えて白井黒子は、上条は見ていなかったが、上条の正面からは消えて、上条が見つめる結構遠い前方に現れた。 空間移動能力。 「今日こそは、お姉さまの仇、討たせていただきますわ!!」 ビシッと指を突き付け、勇ましく宣戦布告したその相手。 「あァ? またお前か? 懲りねエ奴だぜ、ったく――――」 狂ったように白く、歪んだように白く、澱んだように白く。 烈火の瞳はどこまでも冷たく。 黒をベースにしたTシャツにはまるで白い蜘蛛のようなデザインが浮かび上がる。 冬なのに半袖を着ていられるのは自身の能力のためだろう。 学園都市二三〇万人の頂点。 誰も追いつけない位置に君臨している最高最強の能力者。 本来の世界であれば上条当麻、御坂美琴、御坂妹の三人とは切っても切れない因縁を持つ男。 そして、この世界では八月二十一日に御坂美琴を殺した男。 一方通行【アクセラレータ】が凶悪な笑みを浮かべてそこにいた。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/御坂美琴の消失
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/当麻と美琴の恋愛サイド/幸福の美琴サンタ 第3章 あくまでグッズのため 美琴(なんつーか、こいつの不幸を舐めてたわ) あれからも色々あった。 車に轢かれそうになること2回、不良に絡まれた女の子を助けること2回、因縁を付けられること1回、財布を落しかける こと1回、女性にフラグを立てること5回(内2回は美琴に対して)などなど。 その全てを電撃や深呼吸、さらには素数を数えたりして乗り越えてきた。 一度上条に本気でビンタしかけて、寸前で止めたのは御愛敬。 上条「そろそろ止めた方が良いんじゃねぇかなー、と上条さんは提案してみるんだけど」 美琴「しつこいわね、辞めないわよ。この程度の逆境むしろ望む所よ。それにそろそろ慣れてきたところだわ……」 ふふふ。と美琴は不気味に笑う。 体力というより心労でどうにかなりそうだったが、それでも今まで致命的な不幸は回避できているはずだ、と自分を励ます。 不意に、上条の手を引く美琴が立ち止まる。 上条「今度は何だ?」 美琴「着いたわよ」 言われて見上げると、そこには一件のファミレスがあった。大きさはジョナサンと同じくらいだろうか。 普段は本当に何の変哲もないであろう外観だが、クリスマス仕様なのかツリーやらイルミネーションやらで彩られている。 美琴「予約……6時半なんだけど」 悪い予感しかしないな……と二人で同じ事を思うが、そこはお互い口にせず黙って入店する。 店員「御坂様ですね……申し訳ございません。御予約されていたお席の方がですね、現在埋まっておりまして。ただいまから ですと2時間待ちになってしまうんですよ。別のお席でしたらすぐに御用意できますがいかがいたしましょうか?」 予感的中。 いかがいたしましょうかと言われても、二人は頷くしかない。 二人は中年女性の店員に先導されて間仕切りがあるスペースへ通される。 店員「こちらになります。料理の方はコースになっておりますので、随時ご用意いたします」 その空間を見て二人は言葉を失った。 薄暗い2畳程度のスペースはデコレーションリースやチカチカ光るランプなどで飾られ、窓からは外のツリーが見えている。 中央にはテーブルが置かれ、その上には星形のキャンドルやスノーマンの人形が飾られていて、いかにもクリスマスという幻想的 な雰囲気を演出していた。 そこまでは良かったのだが、問題なのはテーブルの前にあるソファであった。 美琴(……何で一つしかないのよ、これに二人で座れっての?) そのソファは二人で座ると少し窮屈と思える程度の幅しかなく、肘掛けも付いているため密着は必至である。 美琴「あのー」 店員「それではごゆっくりどうぞ。ふふっ」 店員は妙な笑みを残しながら行ってしまった。 そこでやっと気付く。 美琴(わわっ!私達いつまで手繋いでるのよ。思いっきり勘違いされて変な気回されただけじゃん!) 二人が通されたのは恋人向けに設えられた席であった。美琴が予約したのは普通の席である。 慌てて二人は手を離してみたが、それで何かが解決するわけでもない。 さてどうしようか、と二人は考えたが、考えたところでどうしようもないのは目に見えていた。 お目当てのグッズは後で渡すと言われていたし、上条にしてもこのまま何も食わずに帰るという選択肢はあり得ない。席を 替えてもらおうにも、店は嘘偽りなく混んでいて望み薄だろう。 美琴がそっと上条の方を見ると、似たようなことを考えていた上条と目が合う。上条は気まずそうに目を逸らす。 どちらにとってもかなり気まずい。上条はとりあえず適当なことを言って誤魔化すことにする。 上条「しかし、あちーな」 美琴「そ、そうね」 学園都市は電力の多くを風力発電から得ているため、基本的にエコなどという感覚は薄い。 結果的に冬は暖房の設定温度が高くなる。 美琴はコートと手袋を、上条はマフラーや手袋、ついでに汚れていた制服の上着を脱ぎ、備え付けのハンガーに掛ける。 ふと上条が美琴の方を見ると、着ているセーターには可愛い犬のキャラクターが描かれていた。 上条は何気なしにそれを見つめてしまう。 上条(やっぱこういう可愛い系のキャラ物好きだよな、こいつ) 美琴「な、何見てんのよ」 美琴はその視線に居心地が悪くなり身をくねらせる。 美琴「悪かったわね子供っぽい服で。どうせ見せることないと思ったのよ」 上条「いや、んなこと考えてねーって」 美琴「どうだか」 などとやってると、間仕切りの戸がノックされる音がした。 定員「お料理お持ちいたしました」 上条「し、仕方ねぇ、座るか」 ここでオロオロしていてもどうしようもないし、店員に「おやおや(笑)」などと思われるのも癪だったので、上条は とりあえず座ることにする。 美琴「あ、アンタこっち。私こっち」 美琴は慌てて上条を引っ張り、ソファの左側に座らせる。 上条は不審な顔をしたものの、別段拒否する理由も無いのでそのまま座る。 普通に座ると本当に密着しそうなので、二人はお互いに出来るだけ端に寄ろうとするが、肘掛けがあるので寄るに寄れず 更に真ん中が少し窪んでいるためどうしても両者の距離は空かない。お互いの肩と肩の間は5cmあるかという程度である。 店員「失礼します」 少しでも動くとくっついてしまいそうなため、二人は姿勢良く固まりつつ料理が並べられるのを見守った。 やがて店員が出て行く。 美琴「えーっと」 上条「あっ、そうだ!」 居たたまれなくなったのか、いきなり上条がおどけたような明るい声を出して、美琴はそれに驚きビクッとする。 美琴「なな、何よ」 上条「先にこれ渡しておくべー」 上条はソファの左側に置いていた大きな紙袋を持ち上げた。 美琴も実はかなり気になっていたのでそちらを向く。 美琴(わ、顔近っ) が、顔を真横に向けると上条の頭がほんの近くにあることに気付き、顔の向きは戻し、目だけそちらを向いた。 上条「卒倒するとか前言ったけどよ、過度な期待はしちゃ駄目ですぞ?」 美琴「分かってるわよ」 それを確認すると、上条は大きな紙袋からどうにか中身を取り出して美琴の目の前へ差し出す。 美琴(……クマ?) 大きな、頭からお尻までで70cmはありそうな、お手製のクマのぬいぐるみであった。 テディベアと言うには少し素人くさいかもしれないが、そこが逆に愛嬌があって可愛い。 美琴「……………」 上条「どした?」 しかも、クマの顔はどことなく上条にそっくりであった。 美琴「……………」 上条「おーい………もしかして気に入らなかったか?」 美琴は黙って静かに両手を上げ、そのクマを受け取ると、静かに抱きしめる。 美琴「……………やばい、嬉しくて卒倒しそう」 上条「ほ、ほんとか?やー良かった良かった」 美琴「アンタ、よく私の好みが分かったわね。しかも何気に上手いし」 上条「いやお前の好みって、モロバレだろ……。上手いのはアレだ、家の隣の奴に少し手伝ってもらった」 美琴「……………女?」 上条「……………俺が住んでるのは男子寮です」 美琴「ふーん」 実は美琴の想像したとおり、手伝ってもらった相手は女で、しかも美琴の知り合いである土御門舞夏であった。 ぬいぐるみの顔が上条似なのは舞夏の仕業である。 上条(俺は嘘は言ってない。言ってないぞ…………って何で俺は言い訳してんだ?) 実は今回のプレゼントで上条はかなり悩んでいた。 『常盤台のお嬢様』にプレゼントの金額で見栄を張ってみたところで意味はないし、そもそも張れるわけもない。 そこで思いついたのが美琴の可愛い物好きであった。初めはゲコ太シリーズだけ好きなのかとも考えたが、色んな言動や 御坂妹の例なども考えて、可愛い物は全体的に好きなのだろうという結論に達し、オーソドックスかつ安上がりであろうクマ のぬいぐるみにしたのだ。 上条(しかし、手作りにしたら安く済むかと思ったけど甘かったな。まぁ喜んでるみたいだから良いか) 美琴はふかふかしたぬいぐるみをひとしきり堪能して、再びぬいぐるみの顔を見つめる。 見れば見るほど上条にしか見えない。見つめてる内に何だか体がポカポカしてきて、徐々に居心地が良くなっていく。 上条「ま、お前のには負けるけどな」 美琴「え?」 その言葉は美琴にとって意外だった。 美琴「なんだ、アンタ喜んでたの?てっきり迷惑なのかと思ってたけど」 上条「いや、まぁ、何というか、俺の不幸が誰かを傷つけるのは正直嫌なんだけど。そうやって、俺の不幸体質に一緒に 立ち向かってくれた人ってのは…………ほとんど居なかったろうからさ。多分」 美琴「………………」 言い淀み、自分のことを『だろう』で話した理由を察して、美琴は黙る。 上条「だからさ、ありがとな」 それでもすぐ近くで上条の笑顔を向けられて、美琴は再び居心地が良くなる。 上条「御坂?」 美琴「うん」 上条「御坂さん?」 美琴「な、なによ」 二人は見つめ合う。 上条「ビリビリを仕舞ってください」 美琴「ふぇっ!?」 気持ちが高ぶりすぎたのか、電気が少しずつ漏れていってるのを指摘されてようやく気付く。 美琴(マズイ!) 慌てたせいか、頭の先を中心に電撃が飛び散りそうになる。 咄嗟に、美琴は上条の右手を左手で上から掴んだ。電撃が止まる。 美琴「………………ごめん、ギブ」 上条「左様ですか」 何がギブアップなのか分からないが上条は適当に答える。最近美琴が漏電体質になっていることは分かっていた。 美琴はとりあえずそのまま深呼吸を繰り返してみるが、どうにも上手く出来ず、単に息が荒い人みたいになってしまう。 左手の感触がやけに鮮明に思えて、鼓動は速まるばかりだ。 徐々に頭が霞がかっていき、まるで上条に酔っているような気分になる。 美琴(にゃゎー。もう駄目。限界) 美琴は何かを諦めて脱力し、頭をコテッと上条の肩に載せる。 頭、肩、腕、脚が軽くくっつき、そこから相手の体温が伝わってくる。 上条(ちょ、ちょっと御坂さん!?) その感触や、美琴から漂ってくる良い匂いに上条は慌てる。 美琴はというと、何故か不思議と落ち着いていくのを感じていた。 今なら普段言えないことでも言えそうな気がする。 美琴「アンタさ」 上条「……な、何ですか」 美琴「もっと私を頼んなさいよ」 上条「むしろ体重は今頼られてるぞ」 上条は体の重心を美琴と反対側に少しずらしてみるが、もたれ掛かった美琴はそのままくっついてくる。 仕方なく重心を元に戻すと、より密着状態になる。 上条(何してんだ俺はっ!頑張れ……頑張れ俺の理性) 美琴「私はアンタが記憶喪失だって知ってんだから、辛い時は辛いって言っていいし、知りたいことがあれば聞けばいい。 愚痴だってこの御坂美琴お姉様が聞いてあげるっつってんのよ」 上条「…………その話か」 少しシリアスな話に、上条はやや落ち着きを取り戻す。 美琴「それだけじゃない。アンタは私に変な気を使う必要なんかこれっぽちも無いんだからね。隠し事もしなくて良いし、 何でも正直に話せばいいのよ」 上条「…………そうだな。美琴サンタだもんな」 美琴「そうよ…………で?」 上条「ん?」 美琴「何か聞きたいこととかある?アンタが覚えてないこととか………もっかい言うけど、気兼ねなんかしなくたっていいん だからね。つかすんな」 上条「……………そうだなぁ。なんつうか、知りたいってのもあるけどさ、知っても何がどうなるってわけでもないし、短い とは言え、今の俺が俺であるのはあの日からの記憶によるものが大きいからな。別にいいよ」 美琴「……………」 上条「ま、気持ちだけ受け取っておくよ」 美琴「……………アンタさ」 上条「ん?」 美琴「まだ私に気を使うつもり?」 上条「……………」 図星である。 美琴はまだ上条がどの段階で記憶喪失になったかを明確には知らない。 上条の美琴に対する態度は、まだ『周りを傷つけないようにする』というスタンスを脱していなかった。 美琴「あーもういいわ。アンタが記憶を無くしたのはいつ?」 上条「……………」 上条にとってこれは一番されたくない質問だったかもしれない。 そこさえ知られなければまだ誤魔化しようはあったはずだ。自分のためだとか偽って、周りを壊さないことも出来たはずだ。 美琴にもそれは分かっている。分かっていて、敢えてその質問をしたのだ。 長い沈黙。何も動いていないはずなのに、テーブルのキャンドルが揺れて、それに合わせて二人の影もゆらゆらと動く。 上条「言わない」 その返答に美琴は溜息をつく。 美琴「アンタ、まさかその程度で私が傷つくんじゃ……とかくっだらないこと考えちゃってるわけ?」 わざと小馬鹿にした態度で言う。 なのに美琴の表情は驚くほど真剣であった。しかしその顔は上条からは見えない。 美琴「見くびってんじゃないわよ」 今度は重く、上条を殴りつけるように言う。 二人の間に再び沈黙が流れる。遠くにある厨房の音が妙によく聞こえた。 上条(はぁ。見くびんじゃないって………お前、さっきから手震えてんじゃん) 触れていないと分からなかっただろうが、美琴の左手は微かに震えていた。本人は気付いていないかもしれない。 しかし、だからこそ、美琴の気持ちが解かった。 それならば、上条は拒絶するべきではないと考える。 どちらも辛いのであれば、せめて本人の望むべき方を取らせた方が良いだろう。 上条も覚悟を決める。 上条「俺の記憶で、最初にお前に会ったのは、八月二十日。自販機前。御坂妹と白井が居た時だ。覚えてるか?」 瞬間。美琴の脳は上条の記憶の中から、上条が覚えていないであろうものを割り出す。 予想はしていたが、その抗いようもない事実に胸を刺されたかのような衝撃を受け、体がこわばる。上条の右手を握り直し、 指を絡ませより強く握る。 それに気づき、上条は静かに歯噛みする。そして、ただ美琴の左手を強く握り返した。 上条「おい、御坂?」 美琴は顔を伏せてしまって震えている。 上条(まさか、泣いてんのか?) 美琴「ププッ」 上条「は?」 美琴は突然ニヤニヤした笑顔を上条に向けた。 上条はかなり面食らう。 美琴「てことはアンタ、『アレ』覚えてないんだ。ふーん。こりゃーからかいがいあるわ」 上条「……ちょっと待って下さい御坂さん。そういうのは反則ではないでせうか。死人に鞭打つような酷い行為ではないでせうか」 美琴「いやいや、だって『アレ』覚えてないんでしょ?あの、アンタが、あんな、裸で…………あいや、ごめん!言わない方が アンタのためかな」 上条「うわ、なんだそれ気になる!でも知りたくない!っつか嘘だろ?な?嘘だよなぁ御坂。嘘と言って下さいお願いします!!」 美琴「ま、嘘ってことでいんじゃないのー?」 上条「ぐあああああああああああやめろおおおおおおおおおおおおお」 さすがに上条はちょっと泣きそうにな顔をする。 いきなり元気を取り戻して、さっきのは一体何だったんだろう―――なんて、さすがの上条でもそんなことは思わない。 美琴の手は未だ震えているのだ。 だから、強く握り返しておいて明るく振る舞う。美琴がそれを望むのなら。 上条(何だよ。結局こいつだって俺にいらねえ気使ってんじゃねぇか) しかし今日だけは咎めないでおいてやる、と心の中で独りごちる。 今日の美琴は幸福を運ぶサンタクロースであるから仕方がない。 美琴「つか私お腹空いたわ。さっさと食べちゃいましょ。後でケーキも来るし」 上条「そうだな…………」 上条はそう言って、今や恋人繋ぎ状態の右手を持ち上げてぶらぶらさせる。 美琴「あ、それで、アンタの昔のことは食べながらながら話してあげるわよ。まずは『~出会い編~』からね」 上条「おい」 美琴「六月頃だったかしら、私が夜」 上条「無視すんな!俺はサウスポーじゃねぇぞ!」 美琴「………ごめん。無理。今離すと多分ビリビリ出ちゃう」 上条「………どうすりゃいいんだよ」 目の前に御馳走があるのに食べられない。そのうえ、正直この状態は恥ずかしすぎた。 しかしここで離して、またビリビリされても困るのは確かである。 仕方がないので右手から出来るだけ意識を逸らし、食べ物の方へ向く。 上条「よし!」 右手を負傷して左手のみで生活していた時もあったのだ、やれば出来るはずである。 上条は左手で割り箸を持つと、とりあえず唐揚げを摘み上げてみた。 美琴「お、上手い上手い」 上条「てめ、他人事みたいに……あっ」 口の近くまでどうにか運んだは良いが、一瞬気が美琴の方に逸れたせいでポロっと落す。 美琴「おっと、はい」 それを下で美琴がキャッチし、そのまま摘んで上条の口元に持って行く。 悔しそうな顔をする上条。 美琴「ほら、あーんは?あーん……ッ!」 自分で言っておいて美琴は猛烈に赤面する。 美琴(何馬鹿なことやってんの私。この状態って100%恋人同士じゃないのよ) しかし上条としては小馬鹿にされているようで更に悔しい。 だから、腹いせに思い切って美琴の指まで豪快に咥える。 美琴「うわっ!ば、ばば馬鹿何やってんのよ」 上条の柔らかな唇の感触に美琴は驚き、素早く右手を引っ込める。 上条「うむ。美味。お前の指含めて」 意地悪そうに言う。 美琴「…………」 上条「っておい、無言で手ぇ離そうとすんな!」 そっと離そうとした美琴の左手が、上条の右手に握り返される。 本気でやる気かどうかは知らないが、この近距離での電撃攻撃はかなりまずい。 美琴「……おしぼりか何か拭くもの無いかしら」 上条をジト目で見つつ、油が付いた右手の指を中空でワキワキしながら尋ねる。 ハンカチは持っていたが、コートの中であった。 上条「いや……なんか無いみたいだぞ、ってスプーンあるんじゃねぇか」 テーブルの上を見回した上条は先割れスプーンを見つけ、それに手を伸ばす。 美琴「そ、そう。無いなら仕方ないか」 そう小声で言って指を舐める。そして舐めてからまた猛烈に赤面して後悔する。 美琴(だから私は何やってんのよー!!) 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/当麻と美琴の恋愛サイド/幸福の美琴サンタ
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【名前】御坂美琴 【出典】とある魔術の禁書目録 【種族】人間 【性別】女 【口調】 一人称:私 二人称・三人称:アンタ、~さん 【性格】 一言で言うならばツンデレ。粗暴で負けず嫌いだが、根は善良。 年上に対しては基本敬語だが、人(上条等)によってはタメ口をきいたりする。 【能力】 電撃使い(エレクトロマスター) 自らの能力で発電した電気を操る能力。 光速の電撃の槍、落雷、電気信号を介したハッキング、警備ロボの操作、 ネットを介した遠隔破壊攻撃、砂鉄や鉄骨を自在に操る電磁力、水を電気分解しその水素により飛行など汎用性の高い特技を持つ。 超電磁砲(レールガン) 御坂美琴の切り札であり、通り名。 物体(主にコイン)に電磁加速を加えて放つ超電磁砲が十八番かつ決め技。 【備考】 名門お嬢様学校の常盤台中学に通う14歳。 学園都市で7人しかいないレベル5(超能力者)の1人で、第3位。 当初はレベル1であったが、数々のカリキュラムをこなして今の地位に上り詰めた努力家。 お嬢様学校に通うにもかかわらず自販機への蹴りでジュースを出したり、スカートの下には短パンを着用していたり、 コンビニで漫画の立ち読みを楽しんだり、年上の上条にタメ口を聞いたりとその言動は優雅や品行方正とは到底言い難く、 周りからは「全くお嬢様っぽくない」などと言われる。 以下、マルチジャンルバトルロワイアルにおけるネタバレを含む 対応するregion、endregionプラグインが不足しています。対になるようプラグインを配置してください。 御坂美琴の本ロワにおける動向 初登場話 0021 ruins 死亡話 --- 登場話数 7話 登場話一覧 【とある魔術の禁書目録】 スタンス 対主催 現在状況 一日目午前の時点で生存 参戦時期 キャラとの関係(最新話時点) キャラ名 関係 呼び方 解説 初遭遇話 カズマ 敵対 あんた 交戦するが、生き残る事を優先し撤退する 0027 我が﨟たし悪の華 衛宮切嗣 友好 衛宮さん 協力してクロコダイル達を襲撃するが、"砂嵐『重』"から美琴を庇い大ダメージを負う 0071 同じ夜明けを見ている サー・クロコダイル 敵対 雷撃によってクロコダイルの首輪が爆発し、結果的に殺害する 0071 同じ夜明けを見ている ライダー(イスカンダル) 敵対 クロコダイルもろとも奇襲を仕掛けるが逃げられる 0111 殺人連鎖 -a chain of murders-(後編) レッド 敵対 あんた 友好関係になりかけるも、混乱のため攻撃して逃げる 0123 私らしくあるためのImagine(幻想) ハクオロ 敵対 あんた 友好関係になりかけるも、混乱のため攻撃して逃げる 0123 私らしくあるためのImagine(幻想) ラッド・ルッソ 敵対 地下で襲撃され、その後乱戦 0133 Radical Good Speed ストレイト・クーガー 友好 地下鉄で乱入、逃がしてもらう 0133 Radical Good Speed リヴィオ・ザ・ダブルファング 敵対 地下鉄で乱入、乱戦 0133 Radical Good Speed ブレンヒルト・シルト 敵対 共同戦線を張るが、改心のため敵対 0144 UN-SYMMETRY
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もくじ テンプレート1 2 推奨事項 一人称表 テンプレート 1 上条さんと美琴のSSをじゃんじゃん投下していくスレです!別に上条さんと美琴だけが出てくるスレじゃありません。上条さんと美琴が最終的にいちゃいちゃしていればいいので、ほかのキャラを出してもいいです。そこを勘違いしないようにお願いします!◇このスレの心得・原作の話は有りなのでアニメ組の人はネタバレに注意してください。・美琴×俺の考えの人は戻るを押してください。・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。・レスする前に一度スレを更新してみましょう。誰かが投下中だったりすると被ります。・次スレは 970ぐらいの人にお願いします。◇投稿時の注意・フラゲネタはもちろんNG。・キャラを必要以上に貶めるなど、あからさまに不快な表現は自重しましょう。・自分が知らないキャラは出さないように(原作読んでないのに五和を出す等)。・明らかにR-18なものは専用スレがあるみたいなのでそちらにどうぞ。・流れが速い時は宣言してから書き込むと被ったりしないです。投稿終了の目印もあるとさらに◎。・創作しながらの投稿はスレを独占することになりますので、書き溜めてから投稿することをお勧めします。・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。・以前に投稿したことがある人は、その旨記述してあるとまとめの人が喜びます。・ちなみに1レスの制限は約4096byte(全角約2000文字)、行数制限は無い模様。◇その他の注意・参考・基本マターリ進行で。特に作品及び職人への過度なツッコミや批判は止めましょう。・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。・クレクレ(こうゆうのを書いてください)等はやりすぎに注意。・読んだらできれば職人にレスしてあげましょう。職人の投稿するモチベーションを維持できます。・誰か投下した直後の投下はできれば控えめに。・倫理的にグレーな動画サイト、共有関係の話題はもちろんNG。・書きたいけど文才無いから書けないよ! →スレの趣旨的にそれでも構いません。妄想と勢いでカバー(ネタを提案する程度でも)。◇初心者(書き手)大歓迎!◇前スレ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part29ttp //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/6947/1449489675/まとめページとある魔術の禁書目録 自作ss保管庫 / 上条さんと美琴のいちゃいちゃSSttp //www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/81.htmlまとめページの編集方針ttp //www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/213.htmlスレ立て用テンプレttp //www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/82.html 2 ■過去スレ上条さんと美琴のいちゃいちゃSSttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1256470292.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part2ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1262324574.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part3ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1264418842.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part4ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1265444488.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part5ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1266691337.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part6ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1268223546.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part7ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1269624588.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part8ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1271074384.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part9ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1272858535.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part10ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1274888702.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part11ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1278386624.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part12ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1281121326.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part13ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1287267786.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part14ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1294570263.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part15ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1297888034.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part16ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1301665322.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part17ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1306158834.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part18ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1313080264.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part19ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1319498239.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part20ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1327581934.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part21ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1335861860.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part22ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1352112151.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part23ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1360844502.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part24ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1363802594.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part25ttp //jbbs.shitaraba.net/movie/6947/storage/1369269992.html上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part26ttp //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/6947/1381415914/上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part27ttp //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/6947/1395680118/上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part28ttp //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/6947/1415780549/上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part29ttp //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/6947/1449489675/■関連ページとある魔術の禁書目録 自作ss保管庫ttp //www31.atwiki.jp/kinsho_second/とある魔術の禁書目録 Indexttp //www12.atwiki.jp/index-index/御坂美琴まとめ Wikittp //wikiwiki.jp/misakamikoto/■関連スレ上条当麻×御坂美琴 専用雑談スレ 追いかけっこ13日目(感想スレ)ttp //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/6947/1394592431/とある魔術の禁書目録 自作SS保管庫スレttp //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/6947/1263738759/とあるSSの禁書目録 PART11ttp //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/6947/1318073465/上条さんと○○のいちゃいちSSttp //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/6947/1269574273/【とある魔術の禁書目録】上条当麻の巡り行く世界39周目 ttp //ikura.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1399215818/【とある魔術の禁書目録 超電磁砲】御坂美琴の抱擁爆発236ttp //ikura.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1400336226/■関連スレ(R-18)上条当麻×御坂美琴 いちゃエロスレ4ttp //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/6947/1322814818/禁書でエロばなしttp //jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/6947/1137215857/【とある魔術の禁書目録】鎌地和馬総合39フラグ目ttp //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1389942201/ 推奨事項 傍点は範囲を引用符“”で閉じて代用すると良いかも? ルビは振りにくいので括弧()で。 沈黙や間は三点リーダ…で。中黒・の連続だと字数嵩むし隙間開くし見目麗しくないですよ。 ダッシュ―は2つ以上重ねるべし。 横書きなので漢数字(〇・一・二・三…)はなるべく使わない。 以前に投稿したことがある人は、その旨記述してあると編集人が管理しやすくなります。 一人称表 オリジナルはここ。作者さんGJ! 【俺】 上条[上条さん]/一方通行/建宮/木原/浜面/駒場/垣根/半蔵/旅掛/オッレルス 【私】(男/他) アウレオルス/火野/天井/闇咲/アレイスター/刀夜[父さん]/ビアージオ/アックア/テッラ/騎士団長/ローマ教皇 【私】(女) 美琴/禁書/神裂/小萌[先生]/姫神/乙姫/舞夏/風斬/シェリー/オルソラ/アニェーゼ/初春/結標/詩菜/美鈴/オリアナ[お姉さん]/リドヴィア/ルチア/アンジェレネ/黄泉川/ヴェント/素甘/最中/五和/麦野/滝壺/絹旗/フレ/ンダ/ショチトル/心理定規/エリザード/リメエア/キャーリサ/ヴィリアン/ベイロープ/レッサー/シルビア/木山/固法/布束 【わたくし】 黒子/婚后/湾内/泡浮 【その他】 芳川/ローラ:わたし,妹達/打ち止め:ミサカ,土御門:オレ,吹寄/佐天:あたし,ステイル/爆弾魔:僕,青髪:ボク,海原(エツァリ):自分,フィアンマ:俺様 _______
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○不良達 7月19日夜、第七学区の鉄橋付近の路上。1巻序章(結果だけ)及び超電磁砲7話。 幻想御手の情報を追って囮捜査を行ったが上条が余計な横槍を入れたために任務失敗。 上条を追いかけ出す不良に対して美琴は並走しながら食い下がったが、ガキと呼ばれてプッツン。 雷撃の槍で一瞬で不良達が全滅した。 ●上条当麻 7月19日夜、第七学区の鉄橋上。1巻序章。 上記戦闘の後、上条に追いついた美琴が一方的に攻撃。 超電磁砲(原作ではわざと外している)、雷撃の槍5発、落雷まで発生させるも全て幻想殺しに防がれた。 美琴は「殴られてないから引き分け」を主張している。 ●上条当麻 7月20日夕方、第7学区の上条の通学路上。1巻第1章5。 「じゃあ、マジメにやってもいいんかよ」という上条のハッタリで美琴が怯んだため、拳を交えることなく終了。